ホーム | コラム | 樹海 | 身近にある宝を見つけよう

身近にある宝を見つけよう

 サンパウロ市でもコンサートを行った事があるBEGINの曲に、「島人ぬ宝」という曲がある。02年発売の曲だが、昨年、とある音楽教室の集まりで聞いて以来、身近なものになった▼「僕が生まれたこの島の空を 僕はどれくらい知ってるんだろう」という言葉で始まる曲は「でも誰より誰よりも知っている 悲しい時もうれしい時も何度も見上げていたこの空を…」と続き、「この島の海、この島の唄をどれくらい知ってるんだろう」と繰り返す。沖縄の本土復帰30周年に向けて、石垣島の中学生達が島への想いを書いた詩をもとに作られたとされる曲を聴くと、漫然と暮らしていると気づかない故郷の価値や大切さにも思いがいく▼當眞嗣一沖縄県立博物館館長(当時)は同年、「島人ぬ宝は島人としての誇り、それを支える歴史・文化、それを育む自然」と評したという。これらのものは身近すぎてその価値に気づかない事もままあるが、自分では意識していなくとも各人の歩みに大きな影響を与える▼人との出会いもまた然りだ。家族や恩師、先輩やクラスメートなどの言葉や生き様が自分の行動や考え方にどれほどの影響を与えてきたかを考えると、自分が与えかねない影響の大きさが怖くもなる。だが、同時に各々の出会いへの感謝の念も湧いてくる▼故郷が持つ懐の広さに似て、万人を包み込むような人もいるが、荒ぶる波の如く周囲の人を蹴散らし、鼻つまみ者になる人もいる。八方美人は困るが、どんな人の前でも自分を飾らず、凛としている人にはやはり心惹かれる。テロや経済危機など、揺れ動く時代なればこそ、揺るがない宝を見つけ、大切にして欲しいと願わされる。(み)