『螢の光』は学校の卒業式に歌い、涙を流して学校と学友との別れを惜しんだ歌、または紅白歌合戦のあと歌われ、過ぎし一年を顧みて互いに別れを惜しむ歌として私の頭の中にあった。
最近、ある歌人の文を読んだ。
「NHK紅白歌合戦の最後に歌われる『螢の光』は、もともとアメリカやイギリスなどで大晦日のカウントダウンに歌われるスコットランド民謡であった。それが作詞され、明治の初めの小学唱歌集に入れられた。『千島の奥も沖縄も、八洲の守りなり…』という歌詞のあることを知った」
私は『日本唱歌集(昭和34年発行)』を出して見た。
<螢の光>
1.ほたるのひかり、まどのゆき/書(ふみ)よむつき日、かさねつつ/いつしか年も、すぎのとを/あけてぞけさは、わかれゆく。
2.とまるもゆくも、かぎりとて/かたみにおもう、ちよろずの/こころのはしを、ひとことに/さきくとばかり、うたうなり。
3.つくしのきわみ、みちのおく/うみやまとおく、へだつとも/そのまごころは、へだてなく/ひとつにつくせ、くにのため。
3.千島のおくも、おきなわも/やしまのうちの、まもりなり/いたらんくにに、いさおしく/つとめよわがせ、つつがなく。
『螢の光』は単なる別れを惜しむ歌ではなく、お互いに海山を隔てた土地にいても、真心一つに国のために盡くせよ。北は千島、南は沖縄まで日本中どこに行こうとも、行った処で国の守りの中にあって、つつがなく励めよ。と、別れゆく友を祝福するすばらしい歌であることを、あらためて知ったのであった。