ホーム | 日系社会ニュース | 『群星(むりぶし)』=県人(ウチナー)意識高揚に強い期待=合評会に100人詰めかけ
創刊趣旨を説明する宮城塾長、その左が高安さん、右が上原さん、嶺井さん
創刊趣旨を説明する宮城塾長、その左が高安さん、右が上原さん、嶺井さん

『群星(むりぶし)』=県人(ウチナー)意識高揚に強い期待=合評会に100人詰めかけ

 沖縄県人移民研究塾同人誌『群星(むりぶし)』創刊号の合評会が11日午後、同県人会本部会議室が行われ、約100人が参加した。最初に嶺井由規(よしのり)さんが作成したDVDが上映され、盛んに意見が交換された。
 宮城あきら塾長は、まず「こんなにたくさん来てくれて嬉しい限り」と喜んだ。一世が70代を超え「我々に残されている時間は限られている」と前置きし、「一世は異国で家族を養うために悪戦苦闘し、言葉の問題もあって、充分にウチナー精神について子供に説明する時間も余裕もとれなかった。そのため、子孫がブラジル市民として立派になっていくと同時に、親にしてみると遠くに離れていくような、孤独感を感じるようになり、深い沈黙のまま家族の時間が過ぎていくようになってきた。一世が本来伝えようとしてきた想いや歴史の真実、〃無形の共有財産〃としての体験談を、ポ語併記のこの同人誌を通して伝えたい。皆さんも書いてほしい」と創刊の趣旨を説明した。

会議室に詰めかけて熱心に話に聞き入る会員たち

会議室に詰めかけて熱心に話に聞き入る会員たち

 島袋栄喜県人会長は「学校の教科書にはドンペドロ二世などの歴史的な英雄が描かれているが、この本には教科書に載っていない〃家族の英雄〃の話が書かれている。ウチナーンチュとしての誇りを強める心の財産だ」と称賛した。
 山城勇県人会名誉会長は、終戦後には機関誌『協和』が2、3カ月に一回は発行され、全会員に配られ、徐々に回数が減った。20年前までは年に1回は出されていたが、無くなった現状を憂いた。「北米の皆さんからは以前、ブラジルには15、6万人もウチナーがいるのに、どうして県人会の会員は4千人しかいないのか、と良く訊かれた。今はそれが2千人に減っている。繋がりが薄れてきたと実感する。この同人誌はその絆を強める一歩だ」と強い期待を込めた。
 塾運営委員の上原武夫さんも「皆さんの体験談の一つ一つが集まって歴史になる。各自それを書いて三世、四世に橋渡しをして下さい」と呼びかけた。エスタード紙論説委員の保久原ジョルジさんは「このような研究会が必要だと前々から痛感していた。私も家の中ではウチナーグチばかりで育った。DVDで流された『てぃさぐぬ花』のメロディに載せた、無名の移民歌人・嘉陽カマトの惜別の琉歌には感動の涙を抑えきれなかった。本の刊行を心から喜びたい」とのべた。
 息子に頼んで車椅子でサンパウロ市パトリアルカ区から駆け付けた前田ハルさん(89、名護市)は「頑張っている県人の応援をしたい。若い人が活躍できるのは先人のおかげ。その一言を言いたくて来た」とハキハキと語った。サントアンドレー支部婦人会が用意した美味しい巻き寿司やサンドイッチまで出され、和気あいあいとした雰囲気の中で活発に意見が交わされた。


□大耳小耳□関連コラム

 同人誌『群星(むりぶし)』創刊号には「死線を越えて―悲劇のカッペン移民」(知花真勲)、「ボリビア開拓地での少年時代」(高安宏治ひろはる)などの苦闘の歴史を綴る体験談に加え、笠戸丸移民の喜屋武亀の三男ソウセイが1948年にレスラーのサンパウロ州大会で優勝し、1950年からは毎週その試合がテレビ放送されるなどコロニア初のプロレスラーになった話(前田徳英とくえい執筆)も掲載されるなど読みどころの多い同人誌(無料)になっている。読みたい方は電話(11・4472・4532)まで連絡を。