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大統領府初の女装者局員のシミーさん(Marcello Casal Jr./Agência Brasil)
大統領府初の女装者局員のシミーさん(Marcello Casal Jr./Agência Brasil)

大統領府に女装者の局員=自身の半生と課題を語る

 大統領府にはじめて、女装者が局員として就任し、話題を呼んでいる。
 シミー・ララットさん(37)は、大統領府人権局LGBT理解促進課のコーディネーターとしての職を得た。彼女はパラー州ベレンのLGBTセンターでの理解を求めた活動が評価されての就任となった。
 もっとも、シミーさんがここまでたどり着くのには苦難の道のりがあった。幼い頃から自分の心と肉体が一致しないことに気がつき、15、6歳になったとき、ホルモン治療も受けたが、外観も変わり、心と肉体の不一致をより明確に感じたため、母親に自分の思いを打ち明けたという。
 ところが、カトリックの家庭の両親はそれを理解せず、病気だと思って治療を施そうとしたために、家出したという。
 唯一理解を示してくれたのは叔父だった。家族は1年間、シミーさんに精神分析を受けさせた上、サッカー教室や教会にも通わせようとしたが、こういった試みは、心と肉体の不一致感をより高めた。
 母親に率直に話したところ、母親がやっと理解を示そうとしたが、そのときも「あなたはゲイなのね」と言われ、性同一性障害には気がつかなかったという。母親は女装はしないようにと頼んだが、まもなくシミーさんはやがて女装をして出歩くようになる。
 パラー連邦大学に進学したシミーさんは、卒業するまで「女性」としての本性を隠そうとつとめていたが、周囲の人に男性としての自分を見せなくてはならないことに耐えられなくなった。
 大学を卒業後、就職を希望したが、女装者を受け入れる働き口を探すのはきわめて困難だったという。売春宿で働くことにしたシミーさんは、夜は売春の仕事を行い、日中はべレンのLGBTセンターでボランティアとして働いたという。
 「女装者、男装者を受け入れてくれるところは本当に少ないの。14、15歳で売春に身を投じ、やがて麻薬に手を出し路上生活者になった人もたくさん見てきたわ」とシミーさんは語っている。
 シミーさんが人権局での仕事で望んでいることは、学校や病院といった公共機関が理解を示して受け入れることで、社会全般の偏見がなくなっていくようになることだという。
 大統領府で職を得た現在もシミーさんは「私自身もまだ疎外感を感じている」と語っている。LGBTの多くの人が、売春や暴力の犠牲になり、若くして死亡までする状況を彼女は問題視している。(15日付アジェンシア・ブラジルより)