日本でブラジルのことを説明するのは極めて難しい。さすがにこの数年、日本のメディアでもブラジル経済のことが取り上げられるようになってきて、サンバ、サッカー、アマゾンといったステレオタイプな見方は少なくなってきた。最近は危険(治安)・不景気・五輪の開催可否と言ったところか…。
どちらにしても、一からブラジルのことを説明しなくても良くなって、経済規模は意外と大きいよね、とかアマゾンには健康にいいフルーツがたくさんありそうだよねとか、汚職がすごいみたいだねといったところまでは、割とキャッチアップしている人も多く、「ブラジルでこんなのが今流行っているんだってねぇ!」と、時々私が知らないようなことを教えてくれる人もいる。
ブラジルが徐々に身近になってきて、嬉しい限りだが、これに一歩ビジネスが絡んでくると途端に事情が変わり難しくなってくる。ブラジル特有で、他国ではあり得ない、常識的には考えられない、ビジネスをする側からしたら『不都合な真実』が、大きな壁として立ちはだかる。
あまりに荒唐無稽で、進出する企業にとっては非常に厳しい環境のため、説明する我々が嘘を言っていると思われたり、聞いている方も冗談を言ってからかわれているのではないかと思ってしまう。こちらは大真面目に本当のことを言っているだけで、何も悪いことはしていないのに、言われている側の気持ちもわかるため、ブラジルの代わりに謝ったりしてしまったり…。
まず最初の頻繁にある不都合な真実は、「荷物は簡単に送れない!?」。企業がブラジルに進出しようと思い立ち、まずは展示会にでも出て反応を見たいと。当然のことである。で、「ちょっとサンプルを送るから、おたくの事務所で受け取ってくれる?」と頼まれていつも困る。
一応郵便局からEMSも送れるし、FEDEXもOCSも対象国に入っているので、当然普通に送れると考えて当たり前だ。しかし実際には、書類などの一部例外を除いて、商品カタログなどの印刷物から商品サンプルまで、ほとんどが開封されて、個人宛で500ドル以下の生活に必要な物以外は、関税を払わないと受け取れない。いや、正確に言うと、受け取れない可能性がある。
なぜなら、担当者が眠かったのか、デートのために早く帰りたかったのか、しゃべりながらやって話が盛り上がったためか、たまたま見逃してスルーして入ってしまうことがある。これが、違う意味で困る。今度はこちらが嘘つきになってしまう。
さらに不都合なのは、企業の場合は、「では前もって、もし止められたらいくらぐらい払うか申請をしておくから見積もりをください」と言われることだ。担当者もわけのわからない話ながら、こちらのことも理解してくれて最大限譲歩して言ってくれているのがわかるだけに、ここでまた頭を抱える。
「税関担当者のその時の判断(気分)で、金額が変わりますので、今なんとも言えません」と正直に言うと、「ちょっと、ちょっとバカにしないでくださいよ、そんなはずはないでしょ。だって国がやっているんでしょ? とりあえず、おおよそでいいので見積もり金額を出してくださいよ」となる。これも極めて常識的なコメントであると思う。
結局無理して見積もりを出したりして、実際にかかる金額が分かった時に、高く出しすぎていると「本当にブラジルのことがわかっているんですか?」と言われ、安く出しすぎていると「この差額はどうしてくれるんですか」と。本当に不都合な国である。(つづく)
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