フクヤマ校長は「ここをレフージオ(避難所)と思っている親もいるかもしれないが、〃学ぶ場所〃」と断言する。
現在の日本の法律では外国籍の子は義務教育の対象外となっており、また、「一条校」(学校教育法の第一条に掲げられた教育施設。外国人学校は該当しない)が提供する教育以外は義務教育と認められていない。
つまり、外国籍の子が公立小中学校に在籍するうちは問題なく受け入れられるが、何らかの理由で公立校からブラジル人学校などの外国人学校に移った途端、日本の「学校」には存在しないことになるのだ。
また、公立小中学校に「無償で受け入れられ」はしても、学習の定着度に関係なく年齢によって学年が決まるので、「ただ教室に通うだけ」ということにもなりかねない。
何人かの父兄と話して気付くのは「ブラジル学校=帰国予定」とは言い切れない点だ。「これで正しいのか」「子供のためになっているのか」「今の道を信じて進んでいいのか」――当事者である親子それぞれに、そんな葛藤が感じられた。
ブラジル教育省が認可する在日ブラジル人学校は44校(2013年現在)あるが、「日本人学校」は世界に88校、私立を含めても96校(2012年現在)である。日本人学校は駐在員子弟など帰国予定を条件として、永住者は原則として入学対象外となる。だが、日本のブラジル人学校には「帰伯」が前提でない子供がかなりの割合で含まれており、子によって在学の意味合いが異なっている。
日本の場合、進級は年齢主義をとるため、出席日数が少なくても学力が満足になくても進級・卒業させられてしまう。一方、外国人学校で学んでも日本の高校の入学資格は得られない。
つまり、公立校、ブラジル人学校のどちらを選んでも、子供が高校、大学に進学する学力を身に付けるのは一筋縄ではいかないということ。当たり前のように皆一緒に進級・進学できる日本人の子供には考えられない。日本社会のひずみが、外国籍の子供の教育に集約されている。
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同市役所市民安全課・国際交流室の窓口の一つ、国際交流ラウンジ「FILS」(フィス)の代表冨田貴子(たかこ)さんはこう話す。
「いじめにあっているから小学校から転校したい、学校に要望書を出すから翻訳してほしいという相談をよく受けます。実際にやり取りして結局エスコーラに行った子も何人かいますね」。
同市役所学務課によると、日本国籍を持つ場合は必ず日本の小中学校へ入ってもらうが、外国籍しか持たない子の就学状況は把握していないという。また、市から転出せずに公立小中学校から退学する場合、口頭ではどこの学校へ行くのかを聞いているが、情報の管理まではしておらず、退学した子がその後どうしているかまでは追跡しない。
「やはり、住民票を残したまま転居・帰国してしまうことも多くて…」と、市内に住んでいるかどうかすら即座に把握できない実情を担当者はこぼす。
「外国籍の児童の教育状況について」と市役所に電話をすると、担当がどこの課だかわからず、たらい回しになった。それぞれやるべきことはきっちりやっているのだろう。ただ、漏れてしまうのだ。(つづく、秋山郁美通信員)