男性美容の世界が広がり、かつては男性だけの職場だった理容(理髪)店でも、女性が活躍し始めた。
これまでは男性と女性の髪の毛を切る事だけを仕事としていたダニエレ・アサミ・フチガミさん(24)は、髪の毛を切るだけでは物足りないと思い続けて2年。髭剃りの講習を終えた今年のはじめから、サンパウロ市西部のイタイン・ビビにあるホテルの理容室で月40~50人の男性の髭を剃っている。
フチガミさんは、最近は美容に気を使う男性が増え、髭をのばす人も多いため、将来性があると見込んで髭を専門で扱う事にしたという。
同じ様に考えて美容師を辞め、髭を専門で扱い始めたのは、ダニエラ・ミドリ・カネオカさん(33)だ。彼女が働くのはサンパウロ市西部のラッパの集合住宅で、髪の毛は鋏を使って切り、髭は機械で剃っていたという彼女を後押ししたのは、写真などを持ち込んで「髭はこんな形にしてくれ」と頼む顧客の声だった。
髭専門の女性理容師はまだ少ない。その上、偏見や客の嫌がらせといった壁も乗り越えなくてはならない。
カネオカさんの顧客の一人のグスターヴォ・エンリッケ・デ・カマルゴさん(27)は、「彼女のタッチはもっと軽くて剃刀の使い方もうまい」と絶賛し、彼女以外の人には髭の手入れを任せない。友達とふざけていて髭をのばし始めたというカマルゴさんだが、今は髭がお気に入りだ。
ジエゴ・グスマンさん(32)は、友人の勧めでフチガミさんのもとを訪れた。女性に髭を任せたのは初めてだが、彼女の腕を認め、「女性の方が仕事が丁寧で注意深い」と評価している。
かつては店の主任だったというヴァネッサ・アラウジョ・ドス・サントスさん(34)は、店を辞めてこの道に入り、サンパウロ市南部のジャルジン・タナイに自分の店を構えている。
「女性の髪も切るけど、男性の方が好きよ」というサントスさんも、男性側の偏見などが理由で顧客獲得までに時間を要した。「お客さんと話して、こういう形にして欲しいというリクエストを聞いた上で、仕上がりを見て気に入らなかったら払わなくてもいいからと説明するんだけど、今のところ、お金を払わずに帰ったお客さんはいないわ」と語るサントスさんに迷いはない。(23日付アゴーラ紙より)