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メルコスールの将来占う=ボリビア加盟でどうなる=パラグァイ 坂本邦雄

7月17日のメルコスール首脳会議で一堂に会した大統領ら(前列右から2人目がボリビア大統領)

7月17日のメルコスール首脳会議で一堂に会した大統領ら(前列右から2人目がボリビア大統領)

 先月17日にブラジリアで開催されたメルコスール(南米南部共同市場)の首脳会議で、ボリビア多民族国(Estado Plurinacional de Bolivia)が正会員国に認められた。
 事実、同国は粗(ほぼ)メルコスールの創始直後から今までの長い間、準加盟国と看做(みな)されて来たが、但しこのステータスは他の正会員国との自由貿易は出来るが域外共通関税の恩恵は享けられないものだった。
 この度のボリビアのメルコスール加盟は、地域の非常に特殊な情勢下に於いて、正式に承認されたものである。

亜国、ブラジルは経済危機

 ちなみに、ブロックの2正会員大国は、おのおの重大な経済危機に陥っている。
 先ずその内でアルゼンチンは、輸出の減退が厳しい外貨収入の不足を来たし、国の一般経済の動きが大きく鈍っている。インフレ率の上昇は加速し、本年度の経済成長率は事実上ゼロだと予測されている。
 この情景に加えて更に悲観的なのは我がパラグァイの一番の貿易相手国ブラジルとの相変らずの経済摩擦問題である。
 このブラジルがまた同じく色んな汚職スキャンダルの重大危機の真っ只中にあり、国家経済は明らかに劣化し今年は1%強のマイナス成長が懸念されている。
 国内債務増大の諸問題に加えての高インフレ率や輸出減退の対策に、ジウマ大統領のジョアキン・レヴィー新財務大臣が執った強硬な経済更生政策にも拘らず、その改善の兆候が見られず、却って社会情勢の悪化やジウマ政権支持率の今までにない低下などを惹き起こした。
 その様に緊迫した情況下、レヴィー財務相は改めて更なる経済の低迷を避ける為に、最近やむ無く例の経済更生政策を撤回し、新たな対策を講じているが、その効果は未だ現われず先行きは覚束ない。
 とは言え、この何れの2カ国の経済問題も今更始めての経験ではなく、ブラジルでは1998年にレアル通貨危機、及びアルゼンチンでは2001年の銀行危機でそれぞれの経済破綻を来たした。

変則的なベネズエラ加盟

 しかし当時の国際情勢は今日とは大分違っていた。メルコスール諸国の輸出主要第一次産品(原材料)は国際市場で高価格を保っていた。
 中国は年間8%以上の経済成長率を維持していた時代で、ヨーロッパやアメリカ合衆国も余り華やかではないにしても堅調な成長を続けていた。
 この好い傾向は地域を荒らしていた嵐の勢いを容易にコントロール出来たものであり、特にブラジルでは昨年までは経済の立て直し及びその維持が可能だった。
 一方、ブロックにとって色んな難題を巻き起こしたのはベネズエラ・ボリバル共和国の特異なメルコスール加盟だった。
 同加盟は2008年の決議で承認はされたが、新加盟国の加入にメルコスールが定める条件を充たさない変則的な欠陥があるもので、現在に至ってもそれが是正されていない。
 その中で最も重要な条件はブロック全会員国のぞれぞれの国会に依る加盟決議の批准を要する事であるが、それが未だ揃っていないのである。
 今回のボリビアのケースに関しては当該資料を見る限りではその情況は違う様で、全ての加盟条件は完全に果している。
 そして、なお政治的な視点からすれば、ブロックの小加盟国のパラグァイ及びウルグァイにとってボリビアの正会員国としての加入はメルコスールの均衡性が保たれる為に重要なのである。
 それは共通の利益として、メルコスール創設以前に出来た1963年4月23日調印の同3国間のURUPABOL・ウルパボル協定が改めて見直され、その目的は基本的に諸大国との合理的な公正貿易を追求するものであった。

URUPABOL協定の見直しを

 なお同協定は、2010年12月17日にブラジルのフォス・ド・イグアスー市とパラグァイ側のエルナンダリアス市でそれぞれ行われた3国首脳会議でその効果の再活性化を図る事が合議された。
 その席上、3国首脳は約定国同士の統合、開発に法的及び政治的に有効で、かつ有益な〃武器〃としてウルパボル協定が依然として現存する重要性を強調し、それが引いては地域諸国の統合と開発の努力に貢献するものであると声明した。
 従って、ウルパボル協定3国が国際フォーラムで活発に参加する万全な〃武器〃は揃っている訳で、この統合の利器たる同協定を今回のボリビアのメルコスール加盟を機に改めて活用しない理由はないと言うものである。
 そして、常にダイナミックな外交政策を旨とし、変遷が激しい現代の国際情勢に即応し、長らく冬眠状態にあったウルパボル協定を呼び覚まして、その本分を尽くさなければならない。(註・本稿は8月3日付ABC紙に掲載の元外相で大学教授のホセ・アントニオ・モレノ・ゴンサーレス氏の論評を参考にしたものです)。