戦後日本を代表する劇作家の一人、寺山修司の遺志を引き継ぎ活動する劇団「演劇実験室◎万有引力」(東京)が11月、ブラジル3都市で20年ぶり2度目の来伯公演を行なう。日伯120周年記念事業で、文化庁が助成した。当地初公開される演目『奴婢訓』(ぬひくん)は、寺山主宰の演劇実験室「天井桟敷」が世界31都市で上演を重ねたロングラン作品だ。
83年に解散した「天井桟敷」で演出や音楽を担当していたJ・A・シーザー(寺原孝明)と劇団員31人が結成、今年で31年目を迎える。幻想的でシュールな独特の世界観は他に類を見ず、国内外で高い評価を得ている。
日伯修好百周年が祝われた1995年、聖、サントスなど各地を巡演し、大好評を博した。会場となったSESC等の再公演を求める要望に応じ、SESCと日伯120周年記念事業委員会が公演を企画。楠野裕司、久保ルシオ両プロデューサーが日程等を調整中だ。
寺山氏と親交のあった楠野さんは、「彼はブラジルに来たがっていたが、来られずに死んだ。死後30年ほど経っても、ここでは殆ど知られていないので、これを機会に寺山修司の紹介もできれば」と話した。
『奴婢訓』は、イギリスの作家ジョナサン・スウィフトが18世紀初頭の階級制度を背景に書いた風刺的手稿を基に、寺山修司が戯曲化したもの。東北の一寒村にある主人不在の洋館で、召使たちが交代で演じる主人ごっこを通し、権力と支配という人間社会の主従関係や贈与の意味を問いかける。
11月14、15日にSESCサントス、26日~29日にSESCピニェイロスで公演予定。もう1都市は未定。