米格付け会社大手「S&P」のブラジル降格を受け、ジウマ大統領は支出削減をようやく決意し、増税とあわせて来年度予算案の黒字化を図ろうと修正案を発表した。ところが早々に連邦議会やPMDB勢から反発を受けている。「連邦政府が提案」→「議会が反発」という〃空転〃の繰り返しだ▼政治評論家ケネディ・アレンカル氏のブログによれば、今回もジウマはレナン上院議長、クーニャ下院議長、ルーラ元大統領にも相談せずに修正案を発表した。両議長は「まず支出削減。その後、増税の話を」と前々から忠告しているにも関わらず、支出削減と増税を一組にして発表したから反発は必至だった▼「いずれ両方必要、それなら一緒に」とジウマは効率優先で考えたのか。だが政治家にとって「自分は贅肉を落とした。だから増税も認めて」と企業家や組合に説得するという〃順番〃が大事なのだろう▼今の政局においてPMDBが協力しなけば何も議会を通らない。分かりきっているのに、何の策もなく立ち向かって跳ね返されることの繰り返し…。緊縮財政など夢のまた夢だ▼彼女は「初めての選挙が大統領選で、しかも2度続けて当選」という極めて異色な政治的経歴の持ち主だ。それまでは州や市の局長などの任命される役職のみ▼だから、大統領の割に政治的な交渉経験が極端に少ない。ルーラが敷いたレールを機関車のように進むという官僚的な局面では才能が発揮されるが、今のような「道なき道を行く」局面では、交渉力がないために周囲とかみ合わない。ズルズルと空転が続いて、どこまで国民が我慢できるのか。「夢の五輪」直前に大不況では悲しすぎる。(深)