ついに今週1ドルが4レアルを超えた。わずか2年前には、2レアル前後だったのが半分になってしまったわけだ。しかし4レアルを超えたのは、実はこれが初めてではない。
確かルーラが大統領に就任した2002年の10月頃にも、一瞬だったが4レアル台を打っている。その時の驚きと、対円でも使い出があったのを覚えている。
なぜなら、1990年代初頭の年率3000%というハイパーインフレのブラジルを訪問し、為替のスリリングな世界や、半公然化した闇の両替の面白さ、溢れるストリートチルドレンの問題などを体験しながらも、物価の安さを堪能していたのだが、95年のレアルプランの成功により、1ドル=1レアルに固定されて、いきなり物価が高止まりし、あらゆるものが高くて、参った経験があったからだ。
そこから7年で4分の1に、そして20年で2度、4分の1になったことになる。為替が400%変わるというのは、例えば1ドル360円の時代から7年で90円になる、そして90円だったものが360円になるということだ。日本では信じられない動きである。90円から120円まで動いて、円安・アベノミクスと言っているのは、ブラジルからすると誤差になってしまう。
今は確かに、この20年間で最も大きな経済の下落時期かもしれない。失業者も増え、再びストリートで生活する人が日常化し、治安の悪さも昔に戻りつつあるように思う。
この20年間で、先ほどのルーラショック、アジア通貨危機に端を発したラテンアメリカの通貨危機、そしてリーマンショックなど、何度か経済が急減速し、為替が大幅に振れる時期があったが、GDPは増え続けており、結局下げ相場の時に、一気に投資をしてマーケットを押させた企業が、その後の回復局面で事業を急拡大させ、大きな利益を手にしている。
要するにブラジルの下げ局面は、実は大きなチャンスである。今までの半分の金額の投資で、市場が手に入るのだ。こんな美味しいことはない。
オマハの賢人と言われるバークシャー・ハザウェイのウォーレン・バフェットやアメリカの投資ファンドは、逆張りで経済の後退局面でリスクを取って優良企業を安く買い、回復局面で大儲けをするわけだが、ブラジルは、それにはおあつらえ向きの市場というわけで、現在欧米の投資ファンドは活発に買いに動いている。
景気後退局面のレアル安の時に大きく投資をして、市場を握り、回復局面で儲け、ピークで売り抜けると高い利益が見込めるというのがブラジルの真実だが、これはなかなか日本企業には不都合らしい。
安全第一で、100%安全を担保しないと投資ができない、元本保証を求める日本人のメンタリティでは、景気後退局面では、投資を控えて頭を低くし通り過ぎるのを待ち、回復局面で頭をもたげ、みんなが儲け出したのを確認して、すべて高くなって初めて投資をする。
高く買っているので、当然利益は少なくなるわけで、やっぱりブラジルは儲からないなあとつぶやくことになる。売った方の外資系投資ファンドは、高くなって誰も買わなくなったものを最後に来て高値で買ってくれる日本企業のことを、サンキュー!ラスト・インベスターと呼んでいるそうだ。(つづく)