今年7月、英経済専門紙はブラジル情勢を「終わりないホラー映画」と喩えたが、むしろ「道化師芝居」の様相を呈している▼PMDBが主張する官庁削減をジウマが受入れて39省庁から31に減らし、「2018年までは安泰」と再出発した。その翌日、歳出増加の爆弾法案に大統領が拒否権を行使した件を追認すべく招集した議会で、PMDBを中心に与野党議員がサボタージュして流れた。ルーラ提案を呑んでPMDB大臣を増やした譲歩で、今後は同党挙げた協力が期待された矢先だ▼流れた直後の会見でレナン上院議長は「私は組閣人事に一切口出しをしていない。議会は議会」と言い切った。ジウマが新組閣の人事案をテメル副大統領、レナン上院議長、クーニャ下院議長に求め全員から断られ、同党の別要人に頼って組閣した経緯がある。つまりPMDBは依然、各派閥が好きなように振る舞うカオス集団だ▼PMDBの天下か―と思いきや、「大統領罷免請求」の下院審議を開始する権限を握る、派閥領袖の一人クーニャ下院議長が、スイス隠し口座の件で進退窮まっている。一気に辞任圧力が強まったが、これがしぶとい▼今週、連邦会計検査院が昨年の粉飾会計に違法性を認めれば大統領罷免への道が開ける。それに加え、高等選挙裁判所(TSE)は、最大野党PSDBが要請した、昨年の選挙時にペトロブラス疑惑の汚職資金が選挙運動に流れていた疑惑捜査の継続を6日に決定した。「正副大統領の職責剥奪」の可能性があり「大統領選やり直し」もありえる▼組閣早々のドタバタ劇で、ブラジル格下げ回避に必要な財政緊縮は遠のいたとの見方もさっそく出ている。(深)