14日付けでラモス移住地を舞台にした小説『炉辺談話』(荒木桃里著)は終了し、本日から『父の遺志を遂行した金城郁太郎の移民物語』(上原武夫著)の掲載を開始する。5月に刊行されたブラジル沖縄県人移民研究塾(宮城あきら塾長)の『群星』創刊号から許可を得て転載する。
金城郁太郎の父・金城亀は1917年、沖縄県那覇市の小禄田原からのブラジル移民第1号として若狭丸で渡った。後に4千人といわれる同地区出身移民の最初の一人だ。
亀はマット・グロッソ州アキダバナ地方のノロエステ線の鉄道工事に従事し、現地人と共に荒れた山河にツルハシを握り働き続けた。しかし、慣れない仕事や食事、言葉や風習の違いから身も心も疲れた。孤独の暮らしに体力も劣り、突然襲ってきた心臓発作で倒れ、十分な手当て看病もない闘病に負けて、無念の涙を呑みつつ他界した。
1917年8月渡伯わずか2カ月目のことであった。その後を追って戦後の54年3月、戦後のウルクンチュ(小禄出身)移民4番目として息子の郁太郎は家族を連れて海を渡り、父が果たせなかった夢に挑んだ。