「他の県じゃ、芸能団を連れてきてこちらの人に見せるわけでしょ。でもうちらは、こちらのものを県の人に見てもらえるんだからね」。ある式典で、沖縄県人会の関係者が誇らしげに語っていた。確かに、多くの県人会が活動目的に「母県の伝統文化を継承する」と謳ってはいるものの、そうした活動のある県人会は少ない。別格である「芸能の島」沖縄は、ブラジルにしっかり根付いている▼本紙の過去記事を見ても過去はさておき、現在活動しているところは少ない。とはいえ、1982年に始まった鳥取県人会の傘踊りは有名だ。各地で披露もし、母県との交流も行っている。継続して活動している伝統芸能といっていいだろう。末永く続いてほしいと思う▼山形・花笠踊り、新潟・佐渡おけさ、島根・銭太鼓なども、かつては活動をしていたが現在、練習などで集うことはないという。長崎・蛇踊りなど何らかのイベントなどに向けて準備はする県人会はあるのだろうが、定期的な集まりはない。もちろん、舞踊団体や太鼓などで伝統芸能は継承されているが県人会主体でいえば―という話である▼そのなかでも異彩を放つのが、広島・ブラジル神楽保存会ではなかろうか。日本国外で唯一の神楽団で、ブラジル各地で公演を行っている。一度は途絶えたものの05年から二、三世が中心になり非日系人メンバーもいる。今月25日、創立60周年を祝い、地元広島からの神楽団が舞う。当地メンバーとの競演もあるようで今後の活動の弾みになってほしい。継続の励みになるのは観客の拍手だ。文協大講堂で25日午後3時から。是非足を運んで欲しい。(剛)