「ブラジル映画史上の最高傑作」とも称される「黒い神と白い悪魔」の主要キャストで、その美貌でも知られた女優のヨナー・マガリャンエスが21日、入院先のリオの病院で亡くなった。80歳だった。
1935年8月にリオデジャネイロ市リンス地区で生まれたヨナーは、1954年にリオ市のラジオ・テレビ局「トゥピ」で女優業をはじめ、その後、バイア州の劇団「ア・バルカ」に参加して活動を行っていたが、その際に同州を拠点にして活動していた若手映画監督のグラウベル・ロシャと出会い、1964年に発表された彼の作品「黒い神と白い悪魔」に、主役のマヌエルの妻ローザ役として出演した。
ロシャの作風は、当時のヨーロッパの前衛映画の影響を強く受けたもので、「シネマ・ノヴォ」とも呼ばれたが、同作はその先鞭をつけたとされる。この作品はカンヌ映画祭のパルムドールにノミネートされ、受賞こそしなかったものの、ブラジル映画の台頭を世界に知らせる契機となった。
同作は「世界の名画選」にも、ブラジルの作品としては「シティ・オブ・ゴッド」(02年)と並ぶ代表作としてしばし選出されている。
ヨナーは同作出演後にリオに戻り、そこでも自分の劇団を組むなどして活動したが、同時に開局して間もなかったグローボ局のノヴェーラに出演。1966年に出演した「エウ・コンプロ・エスタ・ムリェール」はブラジルのテレノヴェーラ創世記のヒットとなり、グローボの大型局化のひとつの契機にもなった。
以後、ヨナーはグローボのノヴェーラではすっかりおなじみの女優となり、「サラマンダイア」(66年)、「ロッケ・サンテイロ」(85年)、「チエタ」(89年)といった、同局の歴史を代表するノヴェーラにも主要キャストとして出演を果たした。
ヨナーは美貌が決して衰えない女優としても有名で、50代だった1986年には「プレイボーイ」誌でヌードを飾り、2013年に78歳で出演したノヴェーラ「サンゲ・ボン」でも、80歳が近いとは思えない姿を披露していた。
ヨナーは9月18日に心臓の不調を訴え、リオの病院に入院していた。ヨナーは生前に2度の結婚をしたが、晩年は1人で生活していたという。
ヨナーの葬儀は21日10時からカジュー地区カルモ墓地の第1チャペルで行われ、午後1時半に火葬に伏される。(20日付エスタード紙サイト、G1サイト、アジェンシア・ブラジルなどより)