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伝説のブラジル映画「リミテ」上映=国内で不当扱いも世界で大絶賛

「リミテ」の映画ポスター(ウィキペディアより)

「リミテ」の映画ポスター(ウィキペディアより)

 現在開催中のサンパウロ国際映画祭で、「ブラジル映画最初の金字塔」との呼び声高い、マリオ・ペイショット監督の名作「リミテ」(1931年)が28日に上演される。
 この「リミテ」は、ブラジルはおろか、南米の映画というものが世界に全く知られていない時代に生まれた、南米映画史最初の傑作としても名高い一作だ。
 「リミテ」は、この当時の映画としては長い2時間の作品で、実験的な無声映画だ。本作は、洋上のボートに乗る男1人女2人という登場人物の過去を、回想を織り交ぜながら追うドラマだが、話をつなぐコマの編集が斬新で、必ずしも論理的ではなく、詩的なイメージで話が進められる。
 この作品は、当時の世界の大きな潮流であったドイツ表現主義のフレッド・ムルナウ監督の作風の影響を受けたとされている。また、話を彩る音楽もサティやドビュッシーといった、この当時の知識人が好んだ印象派のクラシックだ。
 この作品は国際的にも紹介され、「市民ケーン」のオーソン・ウェルズや「戦艦ポチョムキン」のセルゲイ・エイゼンシュテインといった映画史上の巨匠監督らも評価していたとされる。
 だが、ブラジル国内での評価は低く、50年代になる頃は現存するフィルムが1本しかない状況だった。その上、その直後に起きたブラジルの映画運動「シネマ・ノーヴォ」の当時の若い映画製作者たちは、「ブルジョワ的」と酷評して、「リミテ」を軽視した。
 また、ペイショット自身も、23歳の若さで同作を作ったものの、その後は小説家として活動し、92年に生涯を閉じている。
 27日付フォーリャ紙の同作の特集では、このときの判断が、ブラジル映画界に同作が生み出した作風の後継者が現れなかった理由だとし、ブラジル映画界の損失だと言わんばかりに嘆いた。
 だが、そんなブラジル国内での評価とは対照的に「リミテ」の国外での影響力は絶大だ。今回のサンパウロ国際映画祭での上演も、アメリカ映画の巨匠マーティン・スコセッシの監修で世界的な名画の保存を目指す「映画財団」のコレクションの一部としての公開となっている。
 「リミテ」は現在世界でベストセラーになっている映画ガイド本「死ぬまでに観たい映画1001本」の中でも、そのひとつに選ばれている。
 「リミテ」は28日、サンパウロ市南部の「シネマテカ・ブラジレイラ」で午後8時30分から上映される。入場料は無料だ。(27日付フォーリャ紙などより)