ブラジルで最も優秀な大学の一つ、サンパウロ総合大学(USP、「うすぴ」と読む)が、サンパウロ市の誕生記念日でもある1月25日に創立80周年を迎える。
1934年1月25日、当時のサンパウロ州知事だったアルマンド・サレス・デ・オリヴェイラの主導により、1827年に創立された法学大学などを吸収合併する形でUSPが作られた。
アルマンド氏はその2年前、「護憲革命」の中心的人物として知られていた。時のジェツリオ・ヴァルガス大統領政権は、これまでの憲法を廃止し報道機関にも強い規制を強いるなどの独裁に入り、サンパウロ州政府にも強い干渉を行なっていたが、それに対して新憲法の制定を求めてサンパウロ州民が武装蜂起して立ち上がったのが「護憲革命」だった。アルマンド氏はここでの敗戦の挫折から「この国にもっとエリートを」との目的からUSPの建設を行なった。
USPはブラジルで最も入学の難しい大学となり、その難易度は南米でもトップクラスのものとなった。同法学部の卒業生には大統領になったものもいる他、国民的歌手のシコ・ブアルキ、世界的な映画監督のフェルナンド・メイレレスなど著名な卒業生も輩出している。
USPは現在も南米で最高レベルの大学と目され、国からは年間50億レアルという、大学が受け取る額としては破格の援助金を受けている。
だが、そんなUSPだが問題も決して少なくない。その課題をあげて行くと、まずひとつは「世界的知名度の不足」。現在、同大学のレベルは世界大学ランキングで226位。アメリカやヨーロッパ、日本の大学に比べるとまだ知名度に雲泥の差がある。
知名度を落とす理由としてもあげられているのが「授業内容」だ。USPの授業は基本が教授による講義形式だ。講義を担当するのは99%が博士号を持つ優秀な人材ではあるが、学生に独創的な研究を行なわせていないことが問題視されている。企業家にしても、ネット・ショッピングの大手企業「ブスカペー」会長のロメロ・ロドリゲス氏くらいしか独自の起業による成功を収めていないという。
有名な政治家や官僚、会社幹部は多く輩出するが、独創的な企業家や研究者が多くないのが現状のようだ。
授業内容のほかには、学内でのストの多さもあげられる。USPは軍政時代の学生運動の中心的な大学であり、その気風からか、毎年のように何か問題が起こっては学生たちや職員たちが長期にわたるストを起こしている。その中には「キャンパス内で大麻を吸っている学生に対する処分への不満」もある。
この創立80周年と同時に、マルコ・アントニオ・ザゴ新学長の就任式(この新学長の就任をめぐっても学内抗争が起きていた)が行なわれるが、ザゴ学長はUSPの改革のひとつとして現在の「Fuvest」と呼ばれる2段階の試験による学生選抜方式を変えることをあげている。「最近の高校は入学試験のための予備校に成り下がっている」と語るザゴ学長はより独創性に溢れた学生を求めている。