2003~13年の10年間に、黒人女性の殺人件数が54%も上昇するなど、ブラジルでは女性に対する暴力が深刻であることが明らかとなった。9日付伯字紙や各紙サイトが報じている。
ラテン・アメリカ社会科学研究所によると、13年に殺された女性は4762人で、03年の3937人より21・0%増えた。10万人当たりの被害者(殺人死亡率)は4・8人で、調査対象の83カ国中5番目。上位4カ国はエル・サルバドル、コロンビア、グアテマラ、ロシア連邦だ。
ブラジルで特に問題視されるのは、黒人女性の犠牲者が約60%に当たる2875人を占め、03年の1864人より54%増えたことだ。この間の白人女性の死者は1747人が1676人に9・8%減り、06年には家庭内暴力に対する刑法「マリア・ダ・ペーニャ法」(MDP)が制定されたにも関わらずだ。
なお、MDP採択後に女性の殺人が減ったのは5州のみ。03~13年に黒人女性の犠牲者減少はサンパウロ州、リオ、ロンドニアの3州だけだ。14年に統一健康システムが対応した女性への暴力事件の67・2%の加害者は「肉親、継父母、現在または過去の伴侶か恋人」だった。
03~13年に女性の殺人死亡率が最も上昇した州はロライマの343・9%で、パライバも229・2%上昇。ヴィトリア(エスピリトサント、ES)、マセイオー(アラゴアス州)、ジョアン・ペッソア(パライバ)、フォルタレーザ(セアラ州)の4州都では女性の殺人死亡率が10人を超えた。女性の殺人死亡率はロライマの15・3人がダントツで、ES9・3人、アラゴアスとゴイアス8・6人、アクレ8・3人と続く。黒人女性の殺人死亡率はES11・1人、アクレ10・4人、ゴイアス10・2人だった。
「国連ブラジル女性の会」のナジーネ・ガスマン会長は今回の結果を受け、「黒人女性は直接的に死にさえ至る暴力にさらされ、間接的にも子供や隣人に絡む暴力被害を受けている」とした。同会長は黒人家庭内での家庭内暴力と、人種差別による黒人女性への暴力を問題視し、「黒人の日」にあたる今月20日に今回の調査結果を正式発表する意向だ。25日は女性に対する暴力撤廃の国際デーとなっている。