「ボサノバの神様」として世界中にその名を知られる存在でありながら、謎多き私生活でも有名なジョアン・ジルベルト(84)が、長きにわたる隠遁生活から脱し、次のプロジェクトに動き出したようだと10日付フォーリャ紙が報じている。
ジョアンと言えば、2003年に日本公演、08年にはニューヨークのカーネギー・ホールでも公演を行うなど、高齢をもろともせず積極的に活動している印象もないわけではないが、2011年に体調不良で生誕80年記念のブラジル・ツアーをキャンセルして以降、音沙汰がなかった。
もっとも、ブラジル国内ではそれ以前から、普段何をしているのかがつかめない人物としても知られていた。ここ数10年間は、リオ南部の高級住宅地レブロンにある140平米の高級コンドミニオの8階に、外界との交流を避け、ひっそりと生活を続けており、それが定説となっていた。
そんなジョアンがどうやらその自宅を出て、コパカバーナにある超高級ホテルで生活をしているらしいとの噂は、今年8月、彼の娘でボサノバ歌手のベベウ・ジルベルトが、自身のインスタグラムに同ホテル内で父ジョアンと母ミウシャと共に写った写真を掲載したときに流れた。
フォーリャ紙は真相をつきとめようと、ジョアンのマネージャーで、現在の妻でもあるクラウジア・ファイソルさんに電話取材を行った。するとクラウジアさんは「それは本当のことで、コパカバーナに住んでしばらくになる。私たちは新しい音楽プロジェクトに取り掛かっているところだ」と答えた。
だが、取材班が「それは2000年に発表した最後のアルバムに続く新作のことなのか」と聞くと、クラウジアさんは「移動中だから、メールで質問を送って」と言って電話を切った。取材班はメールを送ったが返事はなく、電話にも出ようとしないという。
ジルベルトのホテルでの生活ぶりも謎だ。同ホテルはミック・ジャガーやジーン・ケリーといった音楽界の大物やネルソン・マンデラ、ダイアナ王妃まで泊まったことで知られるが、ジョアンは午後5時に起きる習慣があり、従業員によると、ホテルが誇る高級レストランには目もくれず、起床後の食事は自室でとるという。自室でとる食事は、レブロンの旧宅に近い高級レストラン「デグラウ」から取り寄せており、少なくとも週3回、注文しているようだ。ジョアンと共に夕食をとる友人は限られており、自分と友人の分の料理を頼み、ホテルと友人宅に届けさせると、電話で話しながら食事を楽しむのだという。
今年はじめまで生活していたレブロンの旧宅は2カ月前からリフォームをはじめたというが、「彼が戻って生活をはじめるためか、別の人が住むためかもわからない」とコンドミニアムの住人は言う。「デグラウ」の支配人も「昨日はジョアン氏が旧宅に食事を届けるよう頼んだ」と証言するなど、住居に関しても謎のままだ。(10日付フォーリャ紙より)