ブラジルのTVドラマ界で今、レコルデ局で放映中の「十戒」が空前のヒットとなり、話題を呼んでいる。
今年の3月から放送開始のノヴェーラ「オス・デース・マンダメントス」は、旧約聖書のモーセの「十戒」を題材にした大河ドラマだ。1950年代にチャールトン・ヘストンを主役にした同名のハリウッド映画も非常に有名だ。
この題材はカトリックや福音派の信仰心が強いことで知られるブラジル国民に強くアピールし、放送開始当初から話題だった。
月~土のブラジルの夜9時以降はこの50年間、グローボ局のドラマが独占し、多くの流行もそこから生まれるというのがあたりまえだった。ところがこの「十戒」は、この時間のレコルデ局のノヴェーラとしては過去に前例がないくらいに健闘し、最近では現在グローボ局で放送中のノヴェーラ「ア・レグラ・ド・ジョーゴ」の視聴率を抜くという、異例の事態まで起きていた。
特に、10日の放送はかねてから話題となっていた。それは、この日、主人公モーセが紅海を割る「出エジプト」の回が当たることになっていたからだ。
それはブラジルの宗教界にも影響を及ぼしていた。ブラジルのペンテコステ派の実力者、シラス・マラファイア牧師はこの日、「十戒」の放送時間中に行う予定だった集会の時間を、「これでは信者が来ない」との理由でずらした。マラファイア牧師はこれを「レコルデ局の陰謀だ」とまで語っている。レコルデ局のオーナーは、ウニベルサル教会のエジル・マセド司教だ。
前評判通り、「出エジプト」のシーンは、紅海を割っただけでなく、ブラジルのテレビ界の新記録まで作り上げた。サンパウロ大都市圏での「十戒」の視聴率は、最高で31ポイント、平均でも28Pを記録した。これに対し「ア・レグラ~」は最高21Pで平均19P。グローボ局の膝元にあたるリオでも、前者が最高34Pだったのに対し、後者は21Pに留まった。
レコルデ局のノヴェーラがグローボ局のそれに10P以上の差をつけて勝ったのは、ブラジルのテレビ史上、はじめてのことだ。グローボ局のノヴェーラは、これまでどれだけ不調でも30Pは当たり前のようにとっており、それが20P前後まで落ち込んだというのは屈辱的な結果だ。
奇しくもレコルデ局でモーセが紅海を割ったその瞬間、グローボはまだ前番組のニュースの時間で、別名「赤線」と呼ばれるリオのジョアン・グラール高速道で起こった銃撃戦の模様を流していた。(10日付フォーリャ紙サイトより)