ホーム | 日系社会ニュース | 福島県庁復興報告=「ぜひ福島にきて!」=大震災から4年8カ月=農水産物の安全性を説明=津波映像に「うわぁ…」
パワーポイントによる説明を聞く参加者
パワーポイントによる説明を聞く参加者

福島県庁復興報告=「ぜひ福島にきて!」=大震災から4年8カ月=農水産物の安全性を説明=津波映像に「うわぁ…」

 2011年3月に起きた東日本大震災の復興状況報告のため、福島県庁から国際部の馬目常寿副課長らが来伯。7日にサンパウロ市の福島県人会館で、ポ語通訳つきの報告会を開催した。写真やグラフを使った説明に満足する人がいる一方、「質疑応答の時間が無かった」という不満の声も聞かれた。

 会場が満員となる60人以上が参加し、関心の高さをうかがわせた。受付で同県の紹介パンフレットと、ポ語で書かれた説明資料が配布された。
 諏訪慎弥主査が、「現地に住む私達には信じられないようなマイナスイメージが広まっている」と、食品を中心とした風評被害の深刻さを語った。
 パワーポイントを使用して、馬目副課長が県を紹介。同県の地理的特徴、会津若松城(通称鶴ヶ城)をはじめとする名所、名物、伝統行事などが映像で流された。
 震災当時の写真も表示すると、福島第一原発を大津波が襲った様子が映され、「うわぁ…」という声が会場のあちこちから聞かれた。
 また放射能の広まり具合を示した図を出し、「現在でも立ち入り出来ない地域がある」と解説。今年の7月時点でも避難生活を送る人が10万人以上いると話した。
 第一原発の廃炉については、「中に残っている核燃料をいかに取り除くかが課題」とし、施設が解体され処理が終わるのは2040年から2050年頃と述べた。
 復興状況について、道路や貿易港などの写真を出し、震災当時と改修後を比較。避難指示区域以外では92パーセントに着工し、74パーセントが完了したと報告した。
 風評被害によって農産物や水産物の売上高が落ち込んだ様子を、グラフで表示。出荷時に放射性物質の数値検査を行い、EUや米より10倍程度厳しい国内基準に照らし、合格品のみ出荷していると解説した。
 報告が終わり、大槻立志主幹が福島に原発が存在する理由を明かした。「原発で作られた電力は、ほとんど福島では使われていない」の言葉に、会場から驚きの声が上がった。「昔から東京で使うための電力を、火力・水力・原子力発電所で作ってきた」と解説。
 最後に諏訪主査が「ぜひ福島に来てください」と結びの言葉を述べると大きな拍手が起こった。
 地下ホールで福島県産の米を使ったおにぎり、お寿司、日本酒などが振舞われ、「おいしい」の声が聞かれた。サンパウロ州レジストロから来た直井幸子さん(77、神奈川)は、「今日参加して改めて福島に関心を持った。豊かな伝統のある県なので、みんなで大事にしていきたい」と、満足した顔で感想を話した。
 一方、同県大玉村出身の渡辺三男さん(48)は、「質疑応答が無かったのが残念。ブラジルには浪江町からの移住者も多い。30年後あそこに住めるかどうか、みんな知りたがっている」と残念そうに語った。


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 福島報告会では「質疑応答が無い」ことに不満を持った人がかなりいた。逆にいえば、それだけ関心が高かった。わざわざ日本から来たのに質疑応答の30分がどうして作れないのか―とちょっと疑問に。中には「第二の福島は本当に出ないのか」という切実な疑問を持っていた人も。一行のスケジュールがどうか知らないが、サッカー博物館の見学はしても、肝心の説明が足りないのでは本末転倒か。次回はぜひもっと広く説明会を呼びかけ、質疑の時間を設け、人々の誤解や疑問を解きほぐしてほしい。それを積み重ねることが、風評被害の解決にもつながるのでは。