サンパウロ人文科学研究所(本山省三理事長)の『コロニア今昔物語』が4日午後、翻訳家の後藤田怜子さんを招き文協ビル内の会議室で行なわれた。同氏は「宮本武蔵」(吉川英治)、「潮騒」(三島由紀夫)などの翻訳を手がけたことでも有名。テーマを「翻訳から見た日本語の特質」とし、約40人が集まった。
翻訳について冒頭、「言語との絶え間なき狂気じみた戦い」と評し、「4500年前には古代シュメール語からヘブライ語への翻訳者さえもいた」と紹介。自身が英ポ語の翻訳者としてキャリアを始めたことから、日英ポ語における三国間の文化の違いについて解説した。
日本語の「おはようございます」には「朝からお勤め、お早うございますね」という日本人の、時に仕事中毒とさえ言える「勤勉性」と「思いやり」が込められているとし、「Good morning」、「Bom dia」にはないものだとした。
直訳と意訳の違いにも触れ、「(日本家屋の)廊下をはいずりまわり落ちた」を翻訳する時、「ポ語の『corredor(廊下)』から『落ちる』ことはあり得ないので大変苦労した」と明かし、聴衆の笑いを誘った。
質疑応答では「『一村一品』のように、直訳しても意味が通らない言葉はどう翻訳すべきか」「若い翻訳者の育成はどうなっているか」などの問いにも真摯に答え、1時間半に及ぶ講演が終了した。進行は日本語だったが、熱心にメモを取る非日系の姿も見られた。
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