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申年限定!=2016年の「抱負」聞く=日本に期待することは?

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 新年といえば「今年の抱負」。新しい1年を見据え、成し遂げたいことを言葉にして、家族や友人に(そして自分に)宣言する。新年の干支にちなんで、35歳、47歳、59歳、71歳、83歳の「申年」の男女限定で、1年の目標を語ってもらった。そしてもう1つは、地球の裏側にいても必ず気になる祖国・日本。政治、経済、原発、自然災害、技術開発、オリンピック、在日日系人問題と、気になる話題を挙げればキリがない。この2つをテーマに、年男、年女の声を集めてみた。151210-illust-kubo

 和嶋リカルドさん(47、三世)
「障害児の親たちに光を。日本は地震と外交が心配」

和嶋リカルドさん

和嶋リカルドさん

 「ブラジルは社会的な問題が多い」。16年の抱負について聞くと、リカルドさんはズバッと切り込んだ。「例えば子どもの障害者。身体障害者はまだマシだけど、精神障害者に対する差別はまだまだ多いのが現実」と指摘する。
 「私は自閉症児療育学校の施設長をしている。自閉症児の中には、家に閉じこもっていたり、教育を受けていないケースも多い」と言い、「そのことに悩んでいる親も多い。そんな親たちに希望を与えるのが目標」と難しい課題に挑戦する意欲を漲らせる。
 日本に期待することを聞くと、「日本は地震が多い国だが、日本人が地震に遭ってもパニックに陥らなかった様子はとても素晴らしいと思った」と日本人の冷静さを褒め称えた。
 続いて「最近心配なのが、近いうちに東京で大きな地震が起こるという予測を聞いたこと。そんなことが無いように心から祈っている」と、近年ささやかれる都市圏への大型地震を懸念する様子を見せる。
 また「近隣諸国との関係も気になりますね。北朝鮮のミサイル問題も、いつ落ちてくるか分からない」と言い、そんな事態に陥らないよう外交面でも平和を維持できることを期待した。

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 堅田典子さん(35、愛媛)
「毎日を積み重ねる。美しい日本を見直して」

堅田典子さん

堅田典子さん

 お寺の坊守(僧侶の妻)であり、絵描きでもある堅田典子さん。自筆の申の絵とともに抱負を語ってくれた。
 「とにかく、毎日をきちんと積み重ねること。来年はブラジルに来て、ちょうど10年目の年。日本人として恥ずかしくないようやってきたつもりだが、体面を気にして本質をおろそかにしてきたかもしれない」と自省する。
 「私は浄土真宗本願寺派の坊守として、いま生かされている。そのことの有り難さをしっかりと受け止め、毎日を大切に積み重ねていきたい」との目標として述べた。
 「ブラジルに来て、こんなにも祖国日本を愛して止まない方々がいることを知った。私は日本にいる間、気づけなかった。もったいないことだと思う」と振り返り、「日本を愛する人は世界中にたくさんいるし、そのことに気付いている日本の若い人たちも大勢いる。私たちが誇れる、美しい日本。それを改めて見直したい」と強調した。


 戸田かずえさんと田中節子さん(ともに71、二世)
「みんな元気が一番。津波が無いことを祈る」

戸田かずえさんと田中節子さん

戸田かずえさんと田中節子さん

 同年齢でともに二世の二人に来年の抱負を尋ねると、声を揃えて「家族、子ども、孫が元気で健康、そして仲良く過ごすのが一番」と答えた。母として、やはり最大の関心事は「家族安泰」のようだ。
 戸田さんは、日本について「夫の母が仙台生まれで、東日本大震災の時には仙台のことがとても心配だった。来年は地震がない年であることを祈ります」と話し、田中さんは、「NHKで福島のニュースを何回も見たが、あの災害の映像は本当に恐ろしかった。今後、二度とあのような津波被害が起こらないことを心底望みます」と沈痛な面持ちで語った。
 ポ語中心の生活をしてきただけに、二人は「日本のニュースは難しい。特に政治の話になるとね」と口を揃える。それでも日本が傷つく度に心を痛めるのは、二世も同じ。日本を大切に思う気持ちはしっかりと受け継がれている。
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 吉田保子さん(83、山口)
「好きな歌を続ける。日本人ならどんな問題も乗り越えられる」

吉田保子さん

吉田保子さん

 笑顔が明るい吉田さんに来年のことを聞くと、開口一番「何も考えてない!」と快活に答えた。「私はずっと幸せな人生だったし、困ったことも無いからねえ」と笑い飛ばす。
 来年も「今まで通り、グループで練習している民謡やカラオケを続けていく」と言い、「私は生長の家を信仰してる。毎朝40分、欠かさずお祈りして神様とご先祖様に感謝を捧げる。これを来年も続ける」と幸せの秘訣を明かした。
 15年ほど前に熱海の病院で2年働き、そのお金で両親に日本の土を踏ませることができた吉田さん。43年ぶりの祖国に、両親は大変喜んでくれたという。
 日本について尋ねると「日本は素晴らしい国。そのあたりに物を置いても誰も盗らない」と言い、「今は色んな面で問題を抱えているかもしれないが、日本の人は気持ちがしっかりしているから、どんなことでも乗り越えられる」と厚い信頼感をうかがわせた。


 中林すえ子さん(83、二世)
「息子と会う機会を増やしたい。やはり日本の自然災害が気にかかる」

中林すえ子さん

中林すえ子さん

 子どもたちは全員巣立ち、一人暮らしをしているという中林すえ子さん。ほとんどの親族には会う機会があるが、忙しい息子とはなかなか顔を合わせることが無い。
 「息子はサッカースクールを運営しているから、休みの日はたくさんの子どもたちを連れて試合に出かける」と言い、「孫たちも一緒に出かけるから、顔を見る機会が少ない」と、残念そうに語った。会えるのはクリスマスや正月くらいだそう。来年は「もっと息子家族と会えたら嬉しい」と希望を述べる。
 今まで6回訪日したという中林さん、日本については「幸いなことに、私は今まで日本滞在時に、災害に遭遇したことは無い。けれども台風や地震がよくある国なので、自然災害のニュースはいつも気にかかっている」と心配そうに話した。