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初日から早速作業に向かう吉積俊子さん
初日から早速作業に向かう吉積俊子さん

移民史料館=JICA着物専門家を初派遣=貴重な350点を保存・分類=「ブラ拓糸は西陣より良い」

 ブラジル日本移民史料館(森口イグナシオ運営委員長)に20日から、JICA短期日系シニアボランティアとして着物の専門家の吉積俊子さん(69、兵庫)が派遣されている。任期は短く4月中旬まで。同館には寄付で寄せられた350着の着物と60本の帯が収蔵されており、その保存・分類、データベースを作成することが任務だ。初日に取り組みへの意気込みを聞いてみた。

 昨年12月までは、大阪府伊丹市内の呉服店に勤めていた吉積さんは以前、長らく建築士をしていた。「物を構成する」という建築的な観点から和服にも関心があり、茶道等が趣味で日常的に着物に親しんでいた。
 「この知識を仕事以外で役に立てられないか」と考えていた中、JICAの募集要項を発見、「今しかない」と迷わず応募したという。今後は週5回、史料館に通い、着物と帯の布地、染め、織り、模様、刺繍または年代を記したデータベースを作成する。「一日に10着進めばいいほうだと思う」といい、かなりきつい日程になる。
 データベースが完成すれば、ポ語訳もつける。いずれ着物コレクションに関する本の出版も構想されており、日系人の歴史、史料館の大きな要素の一つとしての広報が可能になる。
 「たんすの中で眠っている、思い出の詰まった着物がまだまだあると思う。そういうものを安心して預けられる環境にしたい」と吉積さん。任務の意義は史料館のためだけに留まらない。
 これまでのブラジルとの接点に聞くと、「知識としては移民のことについて知っていましたが、興味があったのは〃ブラ拓糸〃について」。着物業界に入り、着物作家から「最高級といえるのは西陣織でも博多織でもなく、ブラ拓糸」と話を聞き、一気に興味が沸いたという。「どんな歴史があり、どう作られているのかを知りたい」と興味は尽きない様子だ。
 ブラジル拓殖組合の名を残す唯一の企業「ブラ拓製糸株式会社(BRATAC)」は80年以上も絹を作り続ける。本紙07年8月8日付記事では安い中国製品に押される中、量よりも質で勝負し、《BRATACの糸は、イタリアのブランドメーカー「エルメス」製品に使用される90%の絹を供給》とあり、その品質の高さは日本でも有名なようだ。
 吉積さんは「一般には、日本でさえ和服を着る機会は成人式やお正月くらいで、業界は経済的に大変に厳しい。ブラジルへ着物文化を発信できれば、着物素材を使ったスカーフや洋服を浸透させることも出来るかもしれない」と話す。「着物を通じた日伯の経済交流、その架け橋になりたい」との夢に向かい、黙々と着物と向き合っている。


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 JICAボランティアの吉積俊子さんは「着物は健康にいいんです」とも言う。一般的な衣類の素材は化学繊維を使っているのに比べ、着物は天然素材で肌への刺激が少ないのだとか。アトピーや皮膚炎に悩んでいる人に対しては特にオススメ。地方文協の日本祭りに行った際に、着物が展示されていて、かなりの人気を集めていたのが思いだされる。せっかく専門家が来ているのだから、少し枠を広げて「着物の講演会」「着物のファッションショー」などをやったら、かなり反響があるのでは。