経済危機の最中の15年12月17日に事実上の辞意を表明、翌日にはジウマ大統領がバルボーザ企画相を後任に指名するという、異例の退任劇を演じたジョアキン・レヴィ元財務相が世界銀行財務理事に就任した▼同氏の就任は2月1日。大統領府の倫理委員会が1月29日に発表した「財務相を務めていた人物が国外の機関で働くなら最低6カ月は間を置くべきだ」との決定が31日の委員会で覆り、就任可能となった▼倫理委の決定が発表された時、レヴィ氏は既にワシントン入りしており、世銀側関係者の間ではこの決定はブラジル政府から同氏への報復措置との見方も広がった。だが、レヴィ氏がジウマ大統領に電話をかけ、委員会に決定の見直しを要請した事で、無事就任となった▼同氏が世銀理事に指名された事は1月初旬に発表されていた。2日付のヴァロール紙は、世銀が「レヴィ氏を財務理事に迎える事が出来、非常に満足している」との文書を発表、総裁のジム・ヨン・キム氏は「レヴィ氏は金融関係と市場の動きを熟知し、(世銀のような)多角的なシステムの特性や国々の動向をよく理解しているまれな人物」と誉めそやしたと報じている▼この一件はレヴィ氏の国際的な評価がいかに高いかを示している。その一方、起死回生を賭けてレヴィ氏を財務相に迎えたにも関わらず、その手腕を生かせなかったブラジル政財界の狭量さ、ブラジルが抱える構造的な問題の深刻さなども改めて考えさせられる。財務省での最後の日に「時が来れば分かる」と語ったレヴィ氏。同氏の手腕や価値を認めてくれる人々の間で働きの場を得た事を喜ぶ一方、ブラジルの今後を懸念せざるを得ない現状が辛い。(み)