ジカ熱の世界的流行を受け、国連の人権機関からも妊婦がジカ熱に罹患した場合に起こりうる小頭症誕生を鑑み、中絶を容認するよう働きかける動きがはじまり、ブラジル内でも波紋が広がっていると、6日付伯字紙が報じている。
5日の世界保健機構(WHO)の発表によると、ジカ熱は少なくとも世界33カ国で域内感染(二次感染)がはじまっている。ジカ熱は2015年にブラジルで感染者が確認された後に南米大陸に広がった。また、北米や英国、イタリアなどの欧州、アフリカのガボン、タイやカンボジア、フィリピンなどのアジア諸国でも南米を旅行した人が発症する一次感染が起きている。
この発表を受け、国連人権高等弁務官のゼイド・アル・フセイン氏が5日、ジカ熱感染に伴う小頭症児誕生を防ぐために、妊娠を回避しろと言うだけでは片手落ちだとして、「法律により、この病気での中絶が出来ないことになっている国(避妊薬や妊娠中絶薬へのアクセスが困難な国)は再考の必要がある」との見解を述べた。
国連によると、全世界では、違法中絶が原因で死亡する女性は年4万7千人に上るという。国連側は、ジカ熱感染による小頭症児中絶を違法とすることでこの数字が悪化することを恐れている。
フセイン氏の発言に対し、マルセロ・カストロ保健相は不満げに「ブラジルでは小頭症による中絶は禁止されている。保健省は法を遵守する」とし、法の見直しを行う意向はないことを再表明した。
ブラジルで中絶が認められているのは、強姦によって妊娠した場合と、妊娠を継続すると妊婦に生死の危険が伴う場合、そして胎児が無脳症と診断された場合のみで、いずれも妊娠初期段階での中絶が求められている。
ただ、胎児が小頭症であることが超音波検査で確認できるのは妊娠第3期(約27週目~)以降で、胎児がかなり育っている点も問題だ。
全国司教協会(CNBB)はこの件に関して、公式サイトに南大河州ポルト・アレグレのレオマル・アントニオ・ブルストリン司教による「病気を持ったという理由で子供を殺すのは全人類にとっての不敬行為だ」との記事を掲載している。
伯字紙も、ジカ熱と小頭症との関係が言われはじめて以来、「小頭症を患っても健康に生きることができる」という記事を数件取り扱っている。中には大学も卒業し、小頭症者の手記も出版した南マット・グロッソ州の女性のような例もある。
その一方、女性の権利団体の「センプレヴィヴァ」のソニア・コエーリョ氏のように「金持ちなら中絶だって出来るけど、貧しい女性は自分の体さえ思うように扱えない。障害を持った子供が生まれれば、その世話もしなければならない」との主張する向きもある。