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移民はすでに日本へ入っている《ブラジルからの視点》

平成27(2015)年国勢調査(総務省サイト)

平成27(2015)年国勢調査(総務省サイト)

 NHKは2月26日に《日本の人口は1億2711万47人で、前回5年前の調査と比べて94万7000人余り減りました。国勢調査で人口が減少したのは調査開始以来初めてで、総務省は「日本は人口減少の局面に入った」としています》と報道した▼国勢調査を開始したのは1920年だから、実に約100年ぶりの減少だ。というか、明治以来ほぼ一貫して人口は膨張してきた。そのおかげで食糧難に見舞われ、移民送り出し政策が始まった経緯がある▼人口減に絡んで、《日本もシリア難民の受け入れを》という意見が日本で出ているが、コラム子は反対だ。「移民受け入れ」がどういうことかを、肌身で分かっている政治家や官僚が日本にいるとは思えない▼移民を大量に受け入れることは、自国の文化や伝統を変えることに他ならない。日本文化の特殊性や素晴らしさは海外在住者が一番よく分かっており、それゆえ日本が良い意味で〃世界のガラパゴス〃であることを守ってほしいと痛感している▼日本移民はブラジル発展に貢献してきた。裏を返せばブラジル文化に影響を与えてきた歴史だ。移民受け入れを議論するなら、日本人を送り出した結果、相手の国にどう影響を与えてきたかをまず調べ、それが逆になった場合、日本国民はどう反応するかをしっかりと思考実験すべきだ▼ブラジルは歴史が短く、人口が少なくて住み分けが可能だったから、移民受け入れに成功した。日本には世界に冠たる長い歴史と伝統があり、まったく逆のケース。「欧米が受け入れているから、日本も」と単純に考えるべきではない。日本が人口減に歯止めをかけるためにすべきは「出生率を上げる」ことだ▼一般的に、移民や難民は、その国が好きで行くわけではない。より良い生活を求めて受け入れ先を探すだけだ。移住一世は自分たちの元々からの生活様式をある程度守れないと安定できない。現地に統合するのは主に二、三世の役割であり、彼らの成長と共に現地化が否応なく進んでいく。少なくとも二世代分の時間、できれば三世代分という長期的な視点が必要だ▼一世が現地の言葉を現地人並にしゃべるのは9割方不可能だ。それができるのは外交官、一部駐在員、留学などエリートだけ。移民や難民はまったく別だ。それができないからコミュニティというインフラが必要になり、邦字紙や日系団体が一世に必要な情報やサービスを補完してきた▼日本には「外国人高度人材受け入れ制度」がある。「良質な技能を持つ外国人」にポイントを付け、得点が高い人には永住権を与える制度だ。そのようにお手軽に外国から連れてくるのではなく、もっと身近にいる在日外国人子弟を国際的な人材に育てる中長期的な投資にも目を配ってほしい。「内なる国際化」だ▼彼らを積極的に母国に留学させて語学や特殊技能を習得させ、多国籍企業や官庁で採用できないか。海外日系人協会やJICAは日系人育成のエキスパートであり、いまこそ日本国内でそのような事業を展開すべきではないか▼日本で日本人と同じように育った外国人子弟に、独自文化を維持することを許容し、日本に国際的な雰囲気を内側から醸し出してもらうのだ。移民はすでに入っている。まず彼らを大事に育てる。それができないなら、新しく入れても軋轢を生むだけではないか。(深)