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ブラジル政界のドラマの主役はやはりルーラ氏か(Valter Campanato/Agência Brasil)
ブラジル政界のドラマの主役はやはりルーラ氏か(Valter Campanato/Agência Brasil)

「ハウス・オブ・カード」より面白い=世界のメディアも注目のブラジル政界スキャンダル

 現在、ブラジルのメディアを連日にぎわせているのは、与党の大物政治家が石油公社ペトロブラストを舞台に起こした贈収賄工作に関する連邦警察の捜査「ラヴァ・ジャット作戦(LJ)」で、この動きに、世界中のメディアも注目しはじめている。
 14年3月にはじまったLJでは、ブラジル国内の大手建築業者の大物や、与党・労働者党(PT)の元中央会計、石油公社のペトロブラス元役員らが既に実刑判決を受けた。この事件では、連立与党の上位3党やその政治家たちが、ペトロブラスと外部企業が契約を結んだ際に口を聞いたとして契約金の1~3%を賄賂として受け取ったとされている。
 疑惑の余波は上院議長や下院議長にも及び、ジウマ大統領と不仲で知られるエドゥアルド・クーニャ下院議長は、賄賂受け取り用の秘密口座が発覚して立場が危うくなりだした15年12月に、同大統領への罷免請求を認め、審議手続きに入ることを決めるなど、倫理観のかけらもない。
 さらに今年に入り、ジウマ氏の前任で、2003~10年のブラジル経済大躍進の立役者的存在と見られていたルーラ前大統領が、LJで実刑を受けた企業からの賄賂の代わりに、大統領隠居後の住宅の建て替えなどを自己負担で行わせていた疑惑が浮上。同氏やジウマ氏の大統領選の選挙参謀も収賄容疑で逮捕された。
 3月4日には、LJの捜査の一部としてルーラ氏が住宅問題や別荘改築問題などで連邦警察の事情聴取を受け、9日にはサンパウロ州検察局が高級住宅問題で資金洗浄や名義詐称などの疑いで同氏を起訴、11日には捜査妨害の可能性ありとして逮捕請求も出された。この直後の13日に全国で行われた反政府デモには、300万人以上が集まった。
 だが、裁判所が逮捕請求に応じるか否かの結論を出す前に、「公職につけば地方裁判所の裁判は受けずに済む」という法の抜け穴を狙い、16日には連邦政府がルーラ氏を官房長官に就任させることを明言した。
 このような報道が連日のようにブラジルから流れる様子を、アメリカの経済誌「フォーブス」は11日、同国のヒット・ドラマにたとえ、「まるで『ハウス・オブ・カード―野望の階段』を見ているかのようだ」とたとえた。
 この「ハウス・オブ・カード」は、2013年から同国で動画配信サービスをはじめた「ネットフリックス」が最初にヒットさせたオリジナル・ドラマだ。同作品は、地方の民主党下院議員に過ぎなかった主人公フランク・アンダーウッドが汚職に汚職を重ね、遂には大統領にまで上っていく話だ。
 主人公は2000年にアカデミー賞主演男優賞に輝いた名優ケヴィン・スペイシー。「ユージュアル・サスペクツ」の正体不明のギャング、カイザー・ソゼ役や「セブン」の猟奇殺人犯など、名悪役として知られてもいる人物だ。
 そのフォーブスの記事が出た翌日、ドイツの新聞「ディー・ツァイト」は追い討ちをかけるように「いや、『ハウス・オブ・カード』より面白い」とまで書いていた。
 だが、アメリカやドイツでその記事が出た時点ではまだ、ルーラ氏の官房長官の話は出ていなかった。今頃は新たなドラマの展開にさらに驚いていることだろうが。