ホーム | 日系社会ニュース | 「誇りある文化村、後進へ」=スザノ福博村が85周年=村民200人が祝福に参列=大浦氏の入植前史講演も
出席者全員で記念撮影
出席者全員で記念撮影

「誇りある文化村、後進へ」=スザノ福博村が85周年=村民200人が祝福に参列=大浦氏の入植前史講演も

 サンパウロ州スザノ市の福博村(上野ジョルジ会長)が入植85周年を迎え、20日に同市イペランジア地区の村会館にて記念式典を行なった。文化村として発展を遂げた同村の入植祭には、関係者約200人が訪れ、にぎやかに85周年を祝った。

 式典に先立ち、午前10時から慰霊祭が行なわれた。東本願寺の川上寛祐師が読経し、訪れた村民らが焼香した。法話に立った川上導師は「先人の残した財産に恩を感じつつ、日本人の魂、精神、文化を、命ある限り子孫に伝えてほしい」と願いをこめた。
 村会員で75歳以上の敬老者53人に、記念品と表彰状が贈られた。代表謝辞に立った中島静雄さんは、「これからも充実した未来へ向けてさらに発展することを願う」と後進に激励。来賓、全出席者と共に会館を背に記念写真に収まった。
 記念式典に移り上野会長が挨拶に立った。「原田敬太氏がこの地について85年。入植当時の苦労は計り知れない。発展を経てピークを過ぎ、現在は91家族の会員構成となった」と報告。「不況の中、過分なる寄付を頂いた。我が村にとって最大の問題であった旧街道の通行止めも解決した。困難や課題を乗り越え、前進させるのが我々の使命だ」と決意を語った。
 来賓の汎スザノ文化体育農事協会の山本善左門会長は、「日本式教育によって未来につないでほしい」、文協の山下譲二副会長は「継続は力なり。85年経ても団結を続けてほしい」、中前隆博在聖総領事は「ゲートボール発祥の地としてスポーツ活動も活発。日本人の文化、精神を受け継いでこられた移住地を誇らしく思う」など祝辞を送った。
 記念講演として大浦文雄顧問(91、香川)が登壇。「福博村前史」と題し、入植以前の歴史について語った。「土地を求め1931年2月1日、村創立者の原田氏が初訪問。好印象を受け、移住地設立を決めたのはその5日後だった」などと紹介した。
 契約を交わした相手は、イタリア人移住者のロベルト・ビアンキ氏。日伯新聞社主の三浦鑿から紹介された人物で、移住地周辺400アルケール余りの土地を所有する大地主だった。
 「その土地を分割して日本人家族を導入。そうして出来たのがこの村である。現在400人ほどが村から他界したが、初めに犠牲となったのは原田氏の娘だった。慰霊祭は、子どもらの霊を慰めるという思いを持ってほしい」と呼びかけた。
 終わりに「会館横にある1本の大木は、入植当時から残る唯一の原始林である。歴史の全てを見届けているが、会話できないのが残念だ」と惜しがった。
 昼食時間になり、出席者最高齢の杉本正(まさし)さん、上野眞知子婦人部長らがケーキカットし乾杯。お手製の昼食に、アトラクションの日本舞踊、歌謡ショー、手品を楽しんで散会した。