22日朝(ブラジリア時間の同日未明)、ベルギーのブリュッセルで起きた同時テロで、爆破された地下鉄車両に乗り合わせたブラジル人女性ジャーナリストが、生々しい体験をブラジルに送信した。
同日のテロでは、空港の出発ロビーでの自爆テロ後、地下鉄の車両の中でも爆破事件が起きた。
事件に遭遇したのは、ベルギー在住約20年というベテランジャーナリストのサムラ・ダ・ローザさんだ。ローザさんは自宅から同市中央部に行くために地下鉄を利用、2両目の車両に乗り込むと窓の脇に座った。皆が約1時間前に起きた空港での爆破事件の事を話しており、ローザさんも友人と電話でその件を話していた時、突然、耳を劈くような爆音が響き、気がついたら車両の窓が頭上に落ちていたという。
マルベーク駅を出た直後に起きた爆発で車両内の電気は消えた。車両の外には火の手があがり、車両の中にも煙が流れ込んでくる。レールの一部はひしゃげ、反対側のプラットホームを走る人の姿も見えたという。
ローザさんの向かいにいた青年が「テロだ」と叫び、身動きさえ取れなくなっていた乗客が騒ぎ立て始めたが、落ち着くようなだめ、床に横たわると、見知らぬ者同士も互いに抱擁を交わした。
1人の若い女性が「別の爆発が起きるかも」と不安の声を上げる。何人かは扉を開けようとしたが、ローザさんが乗った車両は壁に押し付けられたようにして止まっており、扉が開かない。
「すぐに逃げないと窒息するぞ」と叫ぶ声に目覚め、窓越しにプラットホームに移る人も出始めた。写真を撮り始めたローザさんに冷たい視線を送る人もいたが、「仕事柄、記録を残しておかないと」と言い、シャッターを押し続けた。
プラットホームに移ると、爆破された車両と多くの負傷者がショック症状を起こしているのが見えたため、カメラを放り出すと、顔中を火傷し、歩けなくなった若い女性の腕をとり、一緒に歩き出した。
この頃には煙が立ち込め、何も見えなくなっていたが、顔に傷を負った機関士が無線で「乗客は皆車両から降りたが、まさに阿鼻叫喚」と話しながら、小さな懐中電灯で照らしてくれるのを頼りに歩く。エスカレーターは変形し、爆発の威力を伝えている。ローザさんや軽傷の人は、重傷者や石のように立ち尽くし、動けなくなった人達に手を貸しながら外に出た。
歩道では通りがかりの人達が初期の救助活動を始めており、ローザさんも水を受け取ったが、救急隊員はあまり水を飲まないよう指示。救急隊員らは重傷者から対応し始め、煙を吸っただけの人は後回しにされた。
多くの人は泣き叫び、「何でこんな目に遭わなきゃいけないの」と問いかけていたが、その内にひとり、ふたりと現場を立ち去り、重傷者だけが残された。負傷者の多くは顔に火傷を負い、肌が赤くただれていた。
「54歳の誕生日の2日前に事件に巻き込まれた」と言うローザさんは、「命を落とした人も大勢いる事を思えば、生まれ変わったようだわ。生死がかかった場面で見た連帯感と絶望感に打ちひしがれた人の姿、火傷などで容貌が変わった大勢の人達に混じり、爆発で吹き飛ばされた腕が1本、歩道に置き去られていた光景は一生忘れないわ」と語っている。(22日付G1サイトより)