熊本県菊池市で養鶏場を営む久川英昭さん(40、熊本)が、「くまもと農業経営塾生ブラジル派遣研修」により3月15日から滞在した。サンパウロ州バストス、グァタパラ、パラナ州ロンドリーナなどを回り、大規模養鶏場などを訪れ、生産から加工、販売、流通までを見学した。
同制度は10年以上の農業従事経験を持つ人材が対象で、約2週間、当地の日系農業関連施設を巡るもの。くまもと農業経営塾は、農業を牽引する人材を育成するため、同県の蒲島郁夫知事を塾長に設立された。
養鶏歴15年の久川さんは、「TPP(環太平洋経済連携協定)交渉の大筋合意により、国際競争力のない農家は淘汰されていく」と指摘。すでに日本の国内市場は飽和状態ではあるが、「野心の強い人にとっては追い風」と語り、自身も外国に目を向けていることから研修を希望した。
実際にバストスの巨大養鶏場を見学し、「生産を日本国内に限定しなくても良いのでは」という気付きがあった。日本の20倍の国土を持つブラジルを見て、「日本で農業をしていると国内ばかりに目が行く。あえて国境という枠を外し、国外生産なども視野に入れるべきだと分かった」と振り返った。
またブラジル農業を牽引してきた日系人に対し、「日本人に対する信頼を積み重ね、誇りをもって生きてきた先輩方には、感謝の念しかない」と敬意を込め、「農業以外の新たな分野でも若い世代が活躍しているのは素晴らしいこと」と感想を語った。