連邦税務局(RF)申告の在外資産を合法化するレパトリアソン法(以下R法と略、正式には「RERCT」)の申告受付が4日から始まった。未申告の在外資産総額の9割が罰金や税金とその利子で徴収されるケースがある一方、R法を使えば30%で済むという一種のアネスチア(恩赦)だ。どんな場合がR法に該当し、どこまでは通常の確定申告(IRPF)を修正することで対応可能なのか。専門家に聞いてみた。
「日本人移住者が本国の銀行口座に5万ドル程度あり、RF未申告の場合、どうなるか?」―木多喜八郎会計士事務所の役員、木多ロジェリオ正三さんは、「基本的にR法は、ブラジル人が外国に送金したり、持ち出したお金から税金・罰金を取るという考え方。移住者や駐在員は外国人であり、しかも元々外国にもっていた資産で、現地で税金を払っている資金の場合は、R法とは異なるのでは」との見解を披露した。木多さんはファクルダーデ・ダス・アメリカス校で講義をし、SBT局で税務コメンテイターも務める。
意外にR法を使わなくても、合法化できるケースはあるようだ。
リベルダーデ区で会計士事務所をかまえる清原ケンジさんも「未申告でも、移住者が元々日本にもっていた資産なら確定申告を修正することで対処できるのでは」という。修正申告で済むのであればR法のように総額の3割を払わなくて良い可能性もある。だが、詳細を専門家に問い合わせた方が無難だという。
さらに清原さんは「R法の法案化を進めていたのは、あのデウシジオ・アマラル上議。政治家などが違法に国外へ持ち出した資金を合法化することを意識した法律である感じがする」との印象を述べる。
同上議は元々PT(労働者党)の重要人物だったが、ラヴァ・ジャット作戦の捜査を邪魔したとの嫌疑で逮捕され、ルーラ前大統領やジウマ大統領が汚職に関与していたと司法取引証言をした人物として有名だ。
二人の専門家に共通しているのは「R法の適応範囲には不明な部分が多々ある」という点だ。
木多さんは「R法の施行が始まったばかり。今、税制専門の弁護士からたくさんの疑問点が税務局に寄せられており、それらに対する回答が6月ぐらいまで順々に出され、徐々に実際の運用が明らかになってくるという段階。駐在員の日本の資産に関してもそこで明らかになるはず。そこまでは様子を見るのが得策。日本の資産の基本情報を集め、RFの発言に目を配りつつ、専門家に相談することを薦める」とのべた。
なお、R法の申請締め切りは10月31日。R法詳細はRFサイト(http://idg.receita.fazenda.gov.br/acesso-rapido/legislacao/legislacao-por-assunto/rerct#ins)まで。
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レパトリアソン法(正式名称RERCT)の細則には《2014年12月末現在で存在した銀行口座が無くなっていた場合、罪に問われることがある》との条項がある。今から日本の口座を閉鎖しても、口座情報の交換を日伯税務当局が始めれば、そこから遡って〃証拠隠滅〃を疑われる可能性がある。というのも、今話題の「パナマ文書」により、経済協力開発機構(OECD)による参加国の税務情報共有化の取り組みが前倒しされた。《2017年にも各国間の情報交換がスタートする》(共同通信12日配信)という。伯米間では今年9月から交換は始まる。日伯間も、いずれ時間の問題か。
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