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「悪党には悪党をぶつけるしかない」

11日のTVクルトゥーラの人気討論番組『ローダ・ヴィヴァ』の画面

11日のTVクルトゥーラの人気討論番組『ローダ・ヴィヴァ』の画面

 「悪党には悪党をぶつけるしかないんだ」――悪の政治学なのか、それとも「実践的なブラジル的政治手法」なのか。11日のTVクルトゥーラの人気討論番組『ローダ・ヴィヴァ』に出演したロベルト・ジェフェルソン元下議の話を聞きながら、不思議なことにある種の清々しさを感じた。政府軍を度々蹴散らしたアントニオ・コンセリェイロの反乱に雲集したカンガセイロの親分たち、パードレ・シセロのもとにはせ参じる百戦錬磨の義賊ランピオンを目の当たりにしたような感じだ▼彼はPTB党首としてメンサロンを最初に内部告発した。PT政権が政府法案を通過させるための票の取りまとめに裏金を受け取っていたと証言し、ルーラの右腕的人物ジルセウらを逮捕にさせ、PT権力永続計画のほころびを最初に作った。7年の実刑判決を受け、この3月に最高裁から免罪されるや、すかさずブラジリア〃伏魔殿〃に参内した。娘に党首を任せていたPTBが大統領罷免に態度保留していたのを、一気に罷免賛成に引き寄せ、ジウマに最後通牒を渡す役割を担った党の一つになった▼ジェフェルソンは同番組で《「最も応援する悪党はクーニャだ」との発言の真意は?》と問われ、こう答えた。《PT勢は権力の中枢を握り、合法、非合法を問わずあらゆる手段を駆使して、〃試合〃(議会運営)を進める達人集団になった。倫理など横において議員の票買収など当り前。表から裏から政府機関を使っていろいろな手を打てる。そんなレベルで試合を進める強敵ルーラに対し、同じレベルに立って一人でも対抗できる悪党はクーニャしかいない。奴ほど議会運営の裏の裏まで知っている人間はいない》。同じリオ選出、古くからの友人ゆえの実戦的な見立てだ。《奴は相手の髪を引っ張り、目んたまに指を突っ込み、噛みついてでも暴れる。ルーラと同じ速さで相手を後ろから撃てる。クーニャは一匹狼のピストレイロ(殺し屋)だが、PTはよく組織された銀行強盗だ》と一気に語った▼さらに《だってFHCにはそんなことはできないだろ。彼は別のレベルの人だ。PTと同じレベルで勝負できない。でもエドゥアルド(クーニャ)は同じ土俵に立てる》。確かに最大野党のはずのPSDBの影が異様に薄いのは、同じレベルで対抗ができる人材がいないからだ。与党のはずのPMDBが、「限りなく野党」の役割を担ってきた▼〃悪党の美学〃の真骨頂はここからだ。《大統領罷免はクーニャの最後の使命だ。これを遂行し終えたら、奴は司法の手に落ちる。疑問の余地はない。下院の罷免投票で、最後の議員がボタンを押したら、あの世への旅路に出発するのさ。時間の問題で、最高裁判断で彼は職責剥奪される》と見ている▼《役割を終えた奴は、冥界と現世を隔てる川を渡す船に横たわり、両目の上に冥銭をおくことになる》とまで言い切った。ローマ時代からあの世に渡る川では渡河料金を払うことになっているらしく、映画でもそんなシーンが描かれることがある。実際に死ぬわけではないから少し大げさだが、「政治家」としての彼は「死罪に等しい」という意味なのだろう▼《でも、今の政権を倒しただけでも、奴はブラジル政治史に名を残したと言っていい。テーメルは大統領になっても絶対に司法に口を出さない。だから、奴には残された時間はとても少ない》。これはあくまでもジェフェルソンの見立てだ。見ごたえのある映画には、必ず個性的な悪役がいる。もしブラジル政界を描く映画が将来できるのなら、個性的な悪役に事欠かないことだけは確かだ。(深)