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テーメル政権発足後にもっと政局混乱する可能性も

1日、サンパウロ市で中央統一労組(CUT)主催の「労働者の日」集会に参加したジウマ大統領(Foto: Roberto Parizotti/CUT)

1日、サンパウロ市で中央統一労組(CUT)主催の「労働者の日」集会に参加したジウマ大統領(Foto: Roberto Parizotti/CUT)

 11日頃に上院で弾劾法廷設置が決定されたら、ジウマ大統領は「180日間の職務停止」となり、同法廷裁判長には最高裁長官が就任する。そしてテーメル暫定政権が発足するが、政局が安定するとは限らない情勢だ。FHCは「党利にこだわっている場合ではない。国家的混迷を救うために、テーメルを〃救国政権〃にすべき」とPSDB全体が大同団結するようカツを入れた▼新政権が順当に続かない場合としては、大きく分けて次の2つの選択肢がある。(1)「18年の国政選挙を前倒しして10月に総選挙」、(2)選挙高等裁判所(TSE)で審議中の「ジウマ=テーメルのシャッパ無効化判決による大統領選挙のみのやり直し」だ▼一つ目は、暫定令などを使って大統領任期を今回だけ2年に短縮し、10月の地方選挙の時に一緒に国政選挙をやるとの案だ。テーメル暫定政権が誕生しても、「選挙で選ばれた大統領ではない」という弱みがあり、国民の支持がどの程度得られるのか不安な部分が強い▼PTなどが大統領選挙やり直し案を温めている裏には、人気のないテーメルでは選挙で当選するのは難しいし、PSDBも現状ではルーラに敵う候補はいないと選挙情勢を分析しているからだろう。この14年間に渡って政権中枢の内部工作に精通したPTだけに、〃あらゆる手段〃を講じるに違いない▼実際この1日に、ジウマはボウサ・ファミリアの9%増額を発表した。これは「テーメル暫定政権が増額を検討」との情報が出たのを受け、先週急きょ出てきた。「財源がない」と渋るバルボーザ財相を説き伏せて発表したとの報道だ。PT最大の票田である北伯や北東伯の支持を固めるような〃最高の選挙対策〃とも考えられ、次の選挙をにらんでいる匂いがする▼この「前倒し総選挙」案は理想的だが、現実的にはかなり難しい。あの連邦議員たちが自分の任期を短縮することに同意してまで、国家の混乱収拾を最優先するとは考えにくい。それにこのやり方は本来、議院内閣制だ。「国民投票を経ずに、憲法修正暫定令(PEC)で前倒し総選挙を実施することは憲法違反ではないか」という点が最高裁によって審議される必要がある▼ただし、この発想の根底にある「選挙を経なくては現在の政治混乱は収まらない」という発想は良く分かる。大統領は弾劾の瀬戸際だし、副大統領もシャッパ無効の審議中、下院議長と上院議長はそろってペトロロン疑惑にある。国家の権力中枢がそろって〃疑惑の黒い霧〃の中にあるという異例中の異例の事態だ。「ゼロから選びなおす」のも選択肢に入って当然だろう▼とはいえ、二つ目の選択肢の可能性が最も高いとの声もある。選挙高等裁判所での「シャッパ無効化」審議にはラヴァ・ジャット作戦の捜査内容が含まれるとの判断が下されたからだ。昨年末からの大統領罷免の難しいプロセスを経て、ようやく新政権ができたと思ったら、それも無効に…。今以上に政局が流動化する最悪の事態だ▼4月5日付仏エル・パイス紙記事によれば《この無効化判決が年末までに出れば、大統領選やり直しになるが、TESの判決が17年以降だと、連邦議会内の間接選挙になる》とある。前者ならPT政権が返り咲く可能性があり、後者ならテーメル政権の後継がPMDBの別の誰かによって立てられる可能性が大だ。まったく状勢が読めない。この政治混乱を見れば見るほど、五輪で浮かれている場合ではない―と思わざるをえない。(深)