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『西風』第3号を刊行=貴重な体験談や読み物も

表紙

表紙

 西風会(中島宏代表)は『西風』第3号(172頁)を3月に刊行した。サンパウロ人文科学研究所のメンバーを中心に毎月1回集まって議論をする集まりで、体験談や調査内容を半年に一度ほど100部程度出版しており、それが3冊目となった。
 「第2次世界大戦開戦直前の船旅」(宮尾進)はアリアンサ移住地生まれの本人が9歳の時(1939年)、信州の実家に渡った実体験を綴った貴重なもの。ブエノスアイレス港の近くでドイツ小型戦艦シュペー号が自爆沈没するのを目撃した客船に、宮尾さんらは偶然にサントス港で乗船した。のちに映画にもなった有名な戦艦自爆事件だ。その余波で客らがまだ「何か興奮している雰囲気」を感じたと書く。宮尾さんは9歳だったので脇山甚作大佐が親権者になった。終戦直後に勝ち負け抗争で殺された、あの脇山氏だ。
 その他、日本の過剰なカタカナ語の氾濫に警鐘を鳴らす一文「カタカナ語」(日比野健一)、40歳前後の一世ながら当地の法学部で学ぶ古杉征己さんが一日で4件の裁判を傍聴する体験記「弁護士の卵奮闘記(中)~正直とジェイチーニョのはざまで~」も興味深い法科学生の実態が描かれている。
 「縦書きと横書き」(駒形秀雄)、「西風会例会―自由討論」(構成・中島宏)、「アンデスの山の上で」(田中慎二)など9編を収録。無料配布。希望者は古杉さん(電話=11・99928・4905)まで連絡を。