JICAシニアボランティアの着物専門家、吉積俊子さん(69、兵庫県)が4カ月間の短期派遣を終えて11日に帰国するに当たり、文協貴賓室で3日昼、作業報告を兼ねた送別会が行われ、移民史料館関係者ら約20人が集まった。
史料館の収蔵品は全部で405点あり、内訳は着物が約300着、帯が2、30本、長じゅばんが10着ほど。これを内袖、振袖、留袖などに分類し、着用者の対象年代、素材、技法、色、紋様の名前、裏地の素材や色・技法、家紋などを確認して、所定の書式に書き込み、データベースにする作業だ。本来は3カ月間の予定だったが1カ月延長して取り組んだ。
史料館の山下リジア運営副委員長は「念願の着物の専門家に来てもらえ、ありがたい。委員の中島(恵美子)さんが10年前からネット検索で調査をしてきたが、分からない点がどうしてもあった。多くの着物が所蔵されているが、展示会をしようにもどんな種類の何の着物か、説明が出来なかった。吉積さんのおかげで価値や分類が判明した。これでカタログができる」と感謝した。
中島委員は「07年から着物の分類調査、撮影などをボランティアで手伝ってきた。ネット調査では素材区分の分からない点がどうしてもある。これで充実したカタログになると安心した」と喜んだ。
吉積さんは「着物には職人が丹精して作った誇りが込められている。親から子へその誇り、想いを伝える特別な商品なんです。移民が持ってきたそんな職人の手作り品、古くて価値のある着物が多いかと予想していました。ですが、思いのほか新しくて華美な化学繊維のものが多く、伝統的な帯もほとんどありませんでした。この点は寂しく思いました」との感想を述べた。
結婚式などに貸し出すサービスをしていたレンタル着物屋からのまとまった寄贈品が収蔵されており、収蔵品の半分ぐらいがその種のもの。残りの多くは「日常着」で、継ぎ接ぎされ、その時代の味が出ているが「着物としての価値」というよりは「歴史的な価値」が高いもの。「着物としての価値」が高くて移民が持ち込んだ収蔵品は多くなかったようだ。
とはいえ、吉積さんは「伝統的な染め、織り、絞りを駆使した内掛けが1着ありました。日本なら1千万円、2千万円ぐらいするかも。もしかしたら現在その技を持った職人が居なくなって同じものを作れない可能性もある貴重な品です」と高く評価する。
同史料館を運営するブラジル日本文化福祉協会の呉屋春美会長も送別会に出席し、「いい仕事をしてもらい感謝している。2018年、移民110周年にイビラプエラ公園のOCA(サンパウロ市美術館)で着物展示会ができないか検討中」とのべ、その機会などに「また来てほしい」と同専門家に別れの挨拶した。
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4月下旬にリンス市で行なわれた日本人入植100周年記念式典では、着物の女性陣が列を作り、大いに会場に華を添えた。せっかくの着物も使う機会がないと宝の持ち腐れに。式典やイベントなどの機会には、着物参加を大いに奨励したいところ。そういえば、昨年の日本祭りでは県連の本橋幹久会長(当時)の羽織袴姿が実に堂に入ったものだった。各地の文協や史料館に寄贈された着物も使わないとモッタイナイ! 着物は太っていても似合うので、ふくよかな体型が多い非日系女性にもOK。イベント時に、着物を着て記念写真を撮るサービスをすれば繁盛するかも。