5月31日は「世界禁煙デー」だが、サンパウロ総合大学医学部心臓研究所の調査によると、09年8月の禁煙条例後、サンパウロ州の心筋梗塞による死者は12%、入院患者も5%減ったと5月30日付アジェンシア・ブラジルや31日付TVニュースなどが報じた。サンパウロ州の禁煙条例は人が集まる閉鎖空間での喫煙を禁じるもので、14年11月には国の法令になった。
調査では条例発効後17カ月間の統一医療保健システム(SUS)の資料を、気温や大気汚染などの影響を排除しながら分析。その結果、心筋梗塞による死者は同条例により12%(実数で571人)、入院患者も5%(142人)減った事が判明したという。
この結果は、サンパウロ市内585のナイトクラブやレストラン、バールで働く従業員627人の呼気中の一酸化炭素(CO)濃度でも裏付けられた。COは煙草の煙に含まれる代表的な有害物質で、禁煙条例前の従業員(喫煙者)の呼気中CO濃度は16・47ppmだったが条例後は10・75ppm、非喫煙者の従業員は7・20ppmが3・75ppmに減少。禁煙条例の効果は非喫煙者の方が大きかった。
煙草を吸わない従業員のCO濃度の変化は、煙草の煙による職場の大気の汚れが、同条例で緩和されたためだ。なお、非喫煙者の呼気中CO濃度は7ppm以下。8~14ppmは軽度(喫煙本数14本以下、各ppmが1本の計算)、15~24ppmは中度、25~34ppmは重度、35ppm以上は超重度の喫煙者と見なされる。
大気の汚染度判定時のCOの上限は10ppmだから、喫煙者は大気汚染の酷い地域に住んでいるのと同じ状況にいるといえる。これは喫煙者の傍にいる受動喫煙でも同様で、煙が蔓延する場所では自分は吸わなくてもCOの害を受ける。
この調査結果は、心臓科医のタニア・オガワ氏の博士論文の一部をなしている。
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