最近、日系代表5団体の間で、四世にも「特別定住ビザ」(現在は三世まで)を発給するように日本政府に意見書を出す動きがあると聞き、これは歓迎すべきだと思った。現在のサンパウロ市の日系団体を見回しても、リーマンショック以降に大量帰伯した日本育ちの三世世代が職員となって活動を支えている。日本語が達者で、日本文化を深く理解する彼らの存在は、今後の「日系社会の宝」だ▼現在では一時滞在の「デカセギ」ではなく、「在日ブラジル人」というにふさわしい世代が日本に育っている。良くも悪くも〃普通のブラジル人〃化していく日系の若者が身の回りに多い中で、日本で育った世代には「第2の戦後移民」的な部分を強く感じる。帰伯した彼らには、いずれ将来の日系社会の屋台骨になってほしい▼とはいえ、そんな彼らもいずれ高齢化する。彼らの様な日本で育った世代が、日本が不況になるたびに大量帰伯し、それがブラジルの日系社会を再活性化する――そんなサイクルができたら、日伯の絆はより永続化する▼米国では1924年に日本移民排斥法が施行されて以来、移住は途絶し、戦争で対戦国となったために古株日系人は日本文化や日本語に興味を持たない人が多く、戦後移住者とは協調しない部分が強いと聞く▼ブラジルの場合、戦争を挟んだ1941年から53年以外は、最後の移民船が来た1973年まで入り続けた。さらに結果的にデカセギブームが「第2の戦後移民」を生んだ▼日本に対して思うのは、「外国人技能実習制度」とかいう中途半端な形で一時滞在労働者を入れるより、日系人を「移民」として受け入れる政策を進めてほしいという点だ。人口減少化を食い止めるために外国人移民導入政策検討との話も聞くが、まずは日系人を入れるべきではないか。だから四世にビザを解禁する意味は大きい▼もちろん、デカセギには負の側面も大きい。だが覆水は盆に返らない。前向きに対処していくしかない。何の受け入れ政策もなく1992年に三世までの特定ビザ発給を始めて、斡旋業者による不当な搾取が多発した過去に学び、ちゃんとした「移民政策」として解禁すべきだ。特に彼らの子供を日本の公教育でしっかりと受け止める体制を作って、「外国に起源を持つ日本市民」を地域住民として受け入れる機運を広めてほしい。日系人でそれができないなら、他の外国人にはもっと難しいはずだ▼日本が国際化するためにすべきことは、外国人をいれることより、日本人の若者が外国経験を積むことだ。それは留学などのハードルの高いものでなく、「なんちゃって移住体験」を積むことだと思う▼外国で数年を過ごすうちに、日本の本当の良さが骨身に沁みて分かるようになる。今の日本がそのままでも充分に凄い国だと、しみじみ実感するまで、外国に滞在する経験をすべきだ。日本の日本人は、実は黄金の椅子に座っているのに、「自分はコジキだ」と勘違いして卑下する変人の集団だと常々思う▼そんな移住体験を積んだ日本人が人口の1割を占めるようになれば、おのずと国際化する。外国人を入れるより、日本人自体が意識を国際化すべきだ。そして、外国滞在する先としては、日系社会のあるブラジルは最適だ。良くも悪くも、この国は日本とは真逆な部分が多い。でも、だからこそ、世界の中で日本がいかに凄いかが実感できる▼日本で四世ビザを解禁し、さらに日本の若者がブラジルで数年を過ごせる滞在ビザ、たとえばワーキングホリデー制度などを結んだらどうか。日系人だけでなく、たくさんの親日ブラジル人が日本を体験できる。ぜひそのような相互交流で、絆を強めてほしい。(深)