2012年ロンドン五輪銅メダリストの上野順恵さん(32、北海道)が、国際協力機構(JICA)の調査団として15日から短期滞在した。今派遣は、柔道分野のボランティア受け入れ先の開拓が目的。最終日程を迎えた24日に上野さんを取材すると、「子どもたちの目が輝いていたことが印象的だった。ブラジル柔道の強化にも、日本の技術を伝える機会がもっと必要」などと話し、約10日間の成果を喜んだ。
最終日の24日、平日午後にも関わらずサンジョゼ・ドス・カンポスには、気合の入ったちびっ子から青年などJudoca(柔道家)約100人が集った。
冒頭の練習風景を見守った上野さんは、「受身から打ち込み、乱取りまでレベルが高い。組み手の時はより実践を意識して取り組んでほしい」と激励。続く質疑応答では腕の使い方、投げ技や寝技への入り方のほか、公式戦に臨む心構えなどを伝えた。「試合の時はとにかく強気で。前に出る気持ちが大事」といった助言に、当地柔道家らも熱心に耳を傾けた。
実演時に相手役を務めたルイス・リマさん(22)は、「上野さんは組んだ時の力の入れ方に強弱があった。私たちブラジル人選手は常に力一杯で相手を押さえ込もうとする。引く、押すの駆け引きを肌で感じることができ、相手の姿勢、重心をいかに崩すべきか学べた」と貴重な体験を喜んだ。
上野さんは15日に着聖、翌日からさっそく実演、交流にあたった。イビラプエラ体育館に併設される南米講道館を訪問し、およそ100人へ指導。17日にはブラジリアに移動し、現地で開催されていた日本祭りで投げ技などを実演した。五輪を間近に控えるリオデジャネイロも訪れ、主に児童を対象に指導した。22日にはサンパウロ州に戻りバストスへ。
全ての公式日程を終えた上野さんは、「こちらの選手は好奇心が旺盛で何でも質問する。特に子どもは目が輝いていた」と感心した様子。「JICAボランティアが柔道分野に派遣されれば強化に繋がる。日本の技術を伝えることが一番」とスポーツ交流の振興に期待をかけ、25日深夜に離伯した。
上野さんにとって柔道交流を目的とした来伯は2013年以来。当時は現在も柔道部コーチとして所属する、三井住友海上火災保険株式会社の業務研修のため、4~9月に滞在していた。
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JICA調査団として、サンパウロ州サンジョゼ・ドス・カンポスを訪れた上野順恵さん。柔道教室に集った選手には黒帯がズラリと並ぶ。約2時間の指導を終えた上野さんも「レベルが高い」と驚きの表情だった。JICA関係者の話だと「市内ではサッカーに次ぐ競技人口」というからうなずける。事実、同地から巣立った選手が2大会連続で五輪に出場していた。上野さんの教えを胸に、目指すは3大会連続、つまり東京五輪出場だ。