ホーム | 日系社会ニュース | 日本祭り閉幕直後にガス漏れ事故=緊急避難、300人が会場外へ=運営、防犯面の課題露呈か

日本祭り閉幕直後にガス漏れ事故=緊急避難、300人が会場外へ=運営、防犯面の課題露呈か

会場外に緊急避難し、不安そうな関係者

会場外に緊急避難し、不安そうな関係者

 パーン、パーン。県連日本祭り最終日の10日午後8時すぎ、くたくたに疲れた県人会婦人部やボランティアが祭りの後片づけをしていたとき、突然、乾いた銃声のような音が会場内で2回も響いた。その直後、取り乱した表情で会場外へ逃げる人が続出。事態を把握できない警備員も「まずは外に避難を! 落ち着いて移動して下さい!」と呼びかけ、現場が一時騒然となった。県人会の手伝いをしていた本紙記者は、偶然その場に居合わせた。

 準備期間から本番を経て疲れがピークに達し、ようやく緊張の糸がほどけ「終わった。あと片付けだけ」と、半ば気を抜いた瞬間の虚を突かれたかたちだ。
 当日の売上金がまだ手元にあり、関係者のみで撤収作業をしていた時間帯だったことから、その場に居合わせた人の多くは、「アラストン(大多数で一斉に行う強盗団)だ」と思い込んだ。その場に居合わせた約300人が、貴重品を手に切迫した表情で避緊急難した。

ガス管の外れた箇所(写真上部)。郷土食広場と企業ブースの中間にあり、ちょうど会場中央から大量のガス漏れが発生した

ガス管の外れた箇所(写真上部)。郷土食広場と企業ブースの中間にあり、ちょうど会場中央から大量のガス漏れが発生した

 会場の外への避難を終えた関係者の間では、徐々に「どうやら強盗ではないらしい」との話が人伝いで明らかになった。落ち着きを取り戻す頃、「トラックが建物内のガス管の下をくぐろうとして破損させた」というガス漏れ事故だったと分かった。
 撤去で入ったトラックの荷台の上部が約3メートルあり、会場の中央を通る郷土食広場用の仮設ガス管はそれよりも低い位置にあった。搬入時の先週木曜日にはその仮設ガス管は設置されておらず、運転手はその存在に気付かなかったようだ。
 そのため、トラックが通過する際にガス管を引っ掛けてしまい、管が外れた衝撃音とガスが勢いよく漏出する音が銃声のように響いたのが真相だった。
 警備員の避難勧告は、ガスが充満する前に外へ退出する必要があったためだった。二世の60代女性は「さっき聞いた音はてっきり銃声だと思った。本当にアラストンだと思って会場の外へ飛び出た」と疲れきった表情で記者の質問に答えた。
 建物のドアを開放し、30分後には消防関係者によって再入場の許可が降りた。少量のガスが残る可能性もあり、「場内では車両のエンジンをかけないこと」「ライターの使用を厳禁」とする注意を受けながら、ボランティアらは残りの作業を済ませ、午後9時過ぎにようやく帰路に着いた。
 撤収を見届けるために残っていた県連役員も避難。山田康夫会長は「大勢の来場者がいない時間だったことが幸いだった」と動揺を抑えつつ安堵した。
 実際にアラストンはなかったとはいえ、撤収時には多くの車両が出入りすることは避けられず、売上金などのことを考えれば防犯面の強化は検討課題だ。加えて、閉幕後すぐにガスの元栓を締めることや、緊急時に混乱を避けるために状況説明するアナウンスをすぐに流すなどの配慮も必要だったと思われる。
 日本祭り自体は大成功だったが、課題は課題として来年に向けて検討すべきだろう。