サンパウロ市最大の繁華街の有名ビルの一つには、市内でも有名な電光掲示板があるが、サンパウロ市がその電光掲示板に政治的な理由でブラジル国旗を掲げることを禁止した。これには政治的な深い理由がある。
パウリスタ大通りにあるサンパウロ工業連盟(Fiesp)の社屋は、同市最大の通りの中でもひときわ有名だ。それはこのビルがとりわけ大きいこと、そして、通りに面し、傾斜がかかった壁に鮮やかな電光掲示板があるためだ。夜毎にその掲示板に描かれる光景は、サンパウロの名物夜景のひとつだ。
だが今回、その掲示板にブラジル国旗を掲げることを市が禁じた。それは表向きには、市が定める「シダーデ・リンパ法」に抵触するためだ。この法律は、サンパウロ市内の建物などに過度な広告を貼ることが、「景観を損なう」との観点から禁止するものだ。
ただ、この背後には、市とFiespの間での政治的対立が存在する。パウロ・スカッフィFiesp会長は、現在停職中のジウマ大統領(労働者党・PT)にかねてから反感を抱いており、同大統領が罷免問題に揺れていた4月には、この掲示板に「フォーラ(辞めろ)、ジウマ」とのメッセージを展開した。この際もサンパウロ市は禁止命令を出している。
もっともFiespの反政府的なキャンペーンはそれ以前からもある。例えば、ジウマ政権が経済的に揺れていた昨年、「政府の失政で国民が付けを払わされるのはごめんだ」とのメッセージを込め、ブラジルのことわざで「他人のせいで損をする」の意味を持つ「パガ・オ・パト(あひるを払う)」にちなんだ黄色の巨大なアヒルを社屋の横に置いていた。
このアヒルは、今年に入ってから加熱したジウマ大統領の罷免を求める国民デモの象徴的存在にもなった。パウリスタ大通りはサンパウロのデモの主な開催地としても知られ、デモが起こるたびにFiespのアヒルの映像や写真が映って有名になったためだ。
一方、サンパウロ市の市長は、PTのフェルナンド・ハダジ氏だ。同じ党の大統領への批判行為を、市内の名物の建物でやらせるわけにはいかない、というわけだ。
なお、スカッフィ会長は、民主運動党(PMDB)の党員でもある。ジウマ大統領に寝返り、ジウマ氏の停職で副大統領から大統領代行となったミシェル・テメル氏と同じ政党だ。(15日付アゴラ紙より)
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