ホーム | ビジネスニュース | 新たな雇用は1最賃まで=依然として厳しい労働市場=状況改善は来年半ば以降?
5月末までの失業率は11.2%で、労働市場は厳しい状況が続く(Camila Domingues/Palácio Piratini)
5月末までの失業率は11.2%で、労働市場は厳しい状況が続く(Camila Domingues/Palácio Piratini)

新たな雇用は1最賃まで=依然として厳しい労働市場=状況改善は来年半ば以降?

 労働省の全就労・失業者台帳(Caged)によると、ブラジルで2015年以降に雇用が増えたのは、最低賃金一つまでの職種のみである事が判明したと20、21日付G1サイトが報じた。
 5月の雇用総数は7万2600人減少、今年1~5月の総計では44万8100人の雇用が減ったが、1最賃以下の層では9万6500人の雇用が増えた。雇用が減ったのは、1・51~2最賃(15万8139人)と2・01~3最賃(14万2962人)の層が中心だ。これらの層は15年も、39万6716人と53万4282人の減少を見ている。
 1~5月に雇用が増えた1最賃までの職種は、農林水産業(4万653人)、加工業(9190人)、サービス業(2012人)で、それ以上の給与だと、商業や加工業でも22万7千人と10万8千人など、解雇の方が上回っている。
 サンパウロ総合大学のルイ・ブラガ教授によると、1980年代は加工業中心に3~5最賃の層が増え、90年代は金融業界を中心に5最賃以上の層が増えたという。
 だが、2000年以降は様相が変わった。90年代に加工業界が解雇した労働者がサービス業などに吸収されるといった形で年間の雇用創出数は大きく伸びたが、その大半は1・5最賃までに集中していた。また、15年以降は不況が深刻化し、15年は154万537人、16年も既に44万8101人の雇用が減った(14年は42万690人増)。
 ブラガ氏によると、2003年以降に創出された雇用は、学歴や就業年数に左右されないサービス業中心で、給与も1・5最賃までと低い。
 現在は、工業界の不振で失業率が上昇して購買力も落ちたため、商業等のサービス業も振るわず、人員削減や高賃金の従業員を解雇して安い賃金の従業員を雇うという悪循環が起きている。また、現状が急に変わる事はなく、当面は入れ替わりが激しいサービス業が失業者の受け皿になる状態が続くと見ている。
 コンサルタント会社のテンデンシアスも、景気回復の兆しはあるが、失業率はまだ上昇する可能性ありと見ている。同社エコノミストのラファエル・バシオッチ氏は、失業者は従来の職種にこだわらずに自己資金で起業したり、低賃金でも良いから職に就く傾向があると説明。雇用回復は来年半ば以降と見ている。
 1最賃の経営助手の職に、複数の言語が話せ、学歴や就業年数も申し分ない人達96人が応募してきた企業などは同氏の言葉を裏付ける例だ。再就職までの期間も伸び、職を求めて9カ月間歩き回ったマリア・ゴレッチさんは、1最賃の掃除婦の職に「定職に就く夢が叶った」と喜んでいる。