2014年から今日に至るまでブラジル社会を揺るがし続け、エドゥアルド・クーニャ下院議長の辞任やジウマ大統領の労働者党政権崩壊の原因のひとつともなったラヴァ・ジャット作戦(LJ)は、国際的にも注目される汚職事件摘発劇となっている。
この大型汚職事件摘発劇で活躍する連邦警察や連邦検察庁、そして、同作戦を司法で管轄するパラナ州連邦裁判所判事のセルジオ・モロ判事たちを、「ブラジルの歴史を変え、世界の汚職対策の模範になっている」と絶賛するアメリカ人判事がいる。
アメリカはメリーランド州の連邦判事ピーター・メシッテ氏は、BBCブラジルのインタビューでラヴァ・ジャット作戦を高く評価している。
メシッテ氏は1960年代にサンパウロでボランティアとして2年間働き、ポルトガル語も習得した。以来、2国間を何度か行き来し、世界で最もブラジルの司法界に通じた専門家として知られている。
同氏はブラジルにおける汚職事件のことを「これまでは取り締りがきわめて甘く、うやむやに終わることが伝統のようになっていた」と語る。
しかし、「それが今や、どこの国の国際誌法会議に行っても、ラヴァ・ジャットが汚職対策の見本のように語られるまでになっている」とメシッテ氏は語る。
メシッテ氏は今年の7月にワシントンDCでの司法会議や、同氏がDCのアメリカン大学で開催する、アメリカとブラジルの2国間の司法関係者の勉強会でモロ判事と会い、親交を温めている。
モロ判事は、アメリカのタイム誌からも「世界で影響力を持つ100人」に選ばれるなど、国際的にも注目されているが、ジウマ大統領やルーラ元大統領の労働者党支持者を中心に、「権力を利用し、政治的に偏った判断を行っている」と批判する向きもある。
メシッテ氏はそれに対し、「モロ氏は実直な判事で、法に従っているまで。政治的な判断をする人物ではない」とした上で、「ブラジルには汚職に対する法律があり、それを適用する人物が必要だ。同作戦に関与している検察庁や連邦警察も、モロ判事同様、国民からの信奉を得、尊重されるべきだ」と語っている。
ただ一点、連邦警察が行っている、逮捕者の勾留期限を延長して、罪の軽減と引き換えに行い、これまで多くの衝撃証言を引き出した「デラソン・プレミアーダ(報奨付供述、司法取引)」については、その法的問題にやや疑問を呈してはいる。
「アメリカにも報奨付供述は存在するし、利用するケースもある。ただ、アメリカの場合、それを実行に移す際は、必ず裁判所に対し、それを行うのが合法的なものであるか否かの確認をする必要がある」との見解を述べている。
メシッテ氏はこのインタビューを、1980年代にイタリアのマフィア撲滅に全力を傾けながらも最後はマフィアに暗殺された同国の判事、ジオヴァンニ・ファルコーネ氏とパオロ・ボルセリーノ氏を引き合いに出し、モロ判事がいかに勇気ある人物であるかを称えて終わっている。(11日付BBCブラジル・サイトより)
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