星が目に痛いほど光っている。それを眺めながら、「私たちは、この先どうなって行くのだろう」と思い巡らした。
茂夫は、少しづつ笑顔が戻ってきた。夜、ランプの下で、雑誌を読んで聞かせると、楽しむ反応を示した。そんな彼がある日、
「川中へ、ちょっと行ってくる。すぐ帰るき」
と言って出かけた。日がとっぷり暮れた。しかしランプを灯すのが恐ろしかった。この生い茂っている雑草の中でぽつんと明かりを灯すということは「ここに人がいます」と、呼びかけているも同じであるから。
随分遅くなって、彼は帰ってきた。大分向こうから「オーイ、オーイ」と叫んでいる。小屋が草で見えないのだ。私は嬉しくなって「ハーイ、ハーイ」と返事をして方角を教えた。彼の顔は、明るく生き生きしている。
その後、土、日の午後からは必ず川中家へ行くようになった。しまいには、週中にも出かけて、毎度真夜中に帰ってくる。
「この有り方は、ちょっと度が過ぎている。でも、食事くらいはおいしい物が口に入るのだろう……」
と気楽に考えていた。そんなある日、茂夫が言った。
「お前の顔を見よると、オヤジの顔が見よるようで好かん!」
あの優しかった人間がである。それだけに、意地悪な人に、百回言われるよりもこたえた。何か嫌な予感がした。それに毎晩、私を求めていた夜のほうも、なくなっていた。
「ああ、そういうことだったのか!」
と分かった気がした。あのおばさんには叶わない。何のしっぽも出さないから……
しかし、父のように暴力を振るうことは、決してなかった。そのことだけでも、母に比べれば我慢できた。
この頃の食生活は、貧に徹していた。あの貧しい本家から、盗むように持ってくる食糧である。僅かにあった野菜まで消えた。おまけに水もない。
裏の原始林に水があることが分かった。しかし相当の距離を入って行かねばならない。やぶを掻き分け、道のないところを通って、水を汲んでくるのは大変な労苦と危険がある。
以前、弟の保明が、本家に近い原始林の側で、畑仕事をしていたことがある。
その時、人の首より太い、長さ四メートルの蛇がいた。保明が気付いた時は、彼の目の前でトグロを巻いていた。その中からぬーっと一メートル弱の首を持ち上げている。私には見えないが、近くにいた。保明は声を殺して、
「蛇がおるばい……大きい……」
と近くにいた父へ伝えた。すると父も声を殺して、
「近い場所か?」
「うん……」
「そんなら動くな! それから蛇の目から、決して目をそらすな!」
「うん……」
「一撃で頭を狙え。外れたらおしまいぞ!」
「…………」
周りも一斉に息を呑んだ……間もなく、エンシャーダを振り下ろす音がした。蛇の首にバンドを巻きつけ、保明が現われた。それを庭まで引きずって行き、蛇の頭から地中まで山刀を突き刺した。頭は小さく、人の手の腹くらいで、三角形。体長は四メートルあった。翌朝庭に目をやると、まだ四メートル全てがうねうねとのたうっていた。