ジウマ大統領は12月29日、テレビとラジオによる演説放送を行なった。演説の中心課題は経済問題で、一部部門が振りまく悲観主義がブラジルへの投資意欲をそぎ、経済成長を妨げていると批判した。12月30日付伯字紙が報じている。
ジウマ大統領の演説は11分間行なわれ、自身の支持率低下にもつながった6月の「マニフェスタソン」は軽く触れたのみで、時間の大半は経済問題について割いた。現政権は13年9月に90億レアルの基礎的収支の赤字を記録、同年第3四半期の国内総生産(GDP)は先進国や新興国の中で最低の0・5%のマイナス経済で、インフレも目標を大きく上回るなど、経済問題が主な批判要因になっている。
大統領は「現政権は現状打破のために何をすべきかを知っており、経済回復への取り組みを放棄させるようなものは何もない」と語り、政府は公的支出をきちんとコントロールしており、財政面は健全だと強調した。
また、常に批判されている「製造部門との対話の少なさ」に対し、「私はブラジルにとって必要なことすべてに耳を傾ける準備ができている」と語り、現在の経済低成長を脱する最速の道は「ブラジルに賭けてみることだ」とした。
大統領は「政府は一部部門が巻き起こす〃心理戦争〃の犠牲になっている」と発言し、連邦政府やブラジル経済への信頼感を失わせるような行為は、国内外の投資家の投資意欲をそぎ、イニシアチブをとろうとする気概を損なうと批判した。また、ブラジルは失業率も低く、起業なども可能な状態にあることも強調した。〃一部部門〃が何をさすかは明確ではないが、ルーラ前大統領とジウマ大統領は以前からマスコミ批判を行なっており、今回の演説もマスコミや野党勢力をさして批判しているとの見方が出ている。
大統領は「マニフェスタソン」という表現を避けつつ、抗議活動の中核を担った若者世代に「現在のブラジルと過去のブラジルを比べてみてほしい」とも呼びかけ、ブラジルが進歩してきたことを自覚することが未来のブラジルの成長につながると語った。
「マニフェスタソン」の主な要求の一つだった汚職撲滅については、労働者党(PT)幹部が実刑判決を受けたメンサロン事件への直接的な言及を避けつつ、「撲滅への手は緩めない」と約束した。また、「マイス・メジコス」や「ミーニャ・カーザ、ミーニャ・ヴィダ」、「ブラジル・セン・ミゼーリア」などの貧困対策で効果があったとし、「少しずつではあるが、ブラジルの生活水準は向上している」とした。
放送後は様々な批判も出、今年の大統領選挙で民主社会党(PSDB)からの対抗馬として有力視されているアエシオ・ネーヴェス党首は、「自画自賛の選挙キャンペーンだ」と自身のフェイスブックで批判した。同氏は「(12月にエスピリトサント州やミナス州で起きた)豪雨の被害者家族や、計画だけで実行に移されていない計画、低成長が続く経済やインフレ、治安問題やクラックの拡大に関する言及がない」とも記載し、「まるで大統領はブラジルを夢の島とでもとらえているかのようだ」と皮肉った。
ジウマ大統領の演説放送は就任3年で既に17回を数え、8年の在任中にそれぞれ22回、21回だったカルドーゾ元大統領、ルーラ前大統領に早くも迫っている。