世界貿易機関(WTO)は11日、ブラジルが実施してきた7種の自国産業保護政策と減免税措置がWTO協定に違反するとして、その撤廃を求めたと12日付現地紙が報じた。
最も批判された保護政策は、ブラジル国内で組立作業を行う自動車メーカーに対して国内調達部品の割合を決め、それに合致した場合には工業税(IPI)を大幅減税する優遇措置(Inovar Auto法・以下IA法)だ。12年に採用された同法はWTO協定でいう内外差別的税制恩典にあたるとして、日本やEUなどが提訴していた。
労働者党政権時に採用され、テメル政権でも引き継がれていた自国産業優遇政策の全てを、廃止もしくは改めるべしと判断されたことは〃大きな敗北〃であると、ブラジル現地紙は報じている。
この決定の影響を受けるのは自動車部門の他、電子工学、製鉄、砂糖・アルコール、セルロース、鉱業、輸出業といった部門だ。
外務省はジウマ政権時から「IA法などの自国優遇措置は、WTO協定に抵触し、訴えられたら必ず負ける」と進言していたが、「訴えられて不利な判断が下っても、撤廃させられるまでは自国産業が恩恵を受ける」として、時の政府が強行したという。
ブラジル政府はもう告訴しており、WTO内の手続きにも時間がかかるため、これまでも航空機産業や綿産業でも起きてきたように、年70億レアルに及ぶ自国産業への優遇税制が直ちに撤廃される事はない。
402ページに及ぶWTOの報告書は、IA法(自動車関連)、情報機器法、Padis法(半導体関連)、PATVD法(デジタルTV関連)を協定違反だとした。
WTOは主に「国外からの投資に補助金を出してはいけない」、「国外メーカーに自国で製造するように強制してはいけない」、「国内で生産されたものと輸入品に税金の差をつけてはいけない」の三つの点から今回の判断に至った。
ブラジル自動車工業協会(Anfavea)会長のアントニオ・メガーリ氏は、「WTOの判断は予想できていた。IA法撤廃には17年末までかかるが、IA法は元々17年末が期限とされていたため、大きな痛手ではない」とした。
同氏は続けて、「政府にはIA法失効後にWTOに接触しない(新たな保護)措置をとる事を期待している」と述べた。
ブラジル工業連盟(CNI)幹部のジエゴ・ボノーモ氏は、「WTOが禁じた政策は重税に喘ぐブラジル産業界への対症療法に過ぎないが、(税制改革を行えば)問題の根源を根絶やしにできる」とし、今回の決定はブラジルにとって税制改革の好機だとの見方を示した。