今上陛下の御誕生日を祝し、6日正午、サンパウロ市モルンビー区の在聖総領事公邸で祝賀会が華やかに開催された。日系団体や日系企業代表のほか、ブラジル政府関係者など約400人が招待され、天皇皇后両陛下のご繁栄とご健康を祈った。
両陛下の御真影が飾られた応接間で、中前隆博は招待客一人一人と丁寧に握手を交わして出迎えた。
23日に83歳を迎える天皇陛下と、10月に82歳を迎えられる皇后陛下について、同総領事は「元気に公務に励まれている。益々のご健康をお祈り致します」と祝辞を述べた。その後、「両国の関係発展にとって大きな年になった」と振り返り、テメル大統領訪日などを挙げた。
また、不景気のなか、「多くの進出企業が乗り越えようしている。在外公館として日本企業の活動を支援していきたい」語り、会場スペースでは、トヨタ自動車を始め企業4社のブースが初めて構えられた。
日伯両国の国歌が高らかに歌い上げられ、皇室の弥栄を祈って乾杯が行われると、関係者は食事に舌鼓をうち、御誕生日を盛大に祝った。
祝賀会に参加した平崎靖之広島県人会会長は、「皇室は日本人の誇りであり、大変めでたいこと。ご健康に長生きして頂きたい」と喜んだ。
通訳として天皇皇后両陛下をはじめ皇室の方々とお会いしたことがあるという相良クリスチーナ泉さん(48、二世)は、「陛下にお会いしたときは、感激で胸が一杯でおもわず言葉が出なくなってしまった」と懐かしんだ。
シベリア抑留を経験した厳格な軍人だった父に育てられ、小さいときから皇室への敬意を持っていたといい、「日系人としてこのような祝賀会に招待されたことを大変光栄に思う」と喜んだ。
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中前総領事は天皇誕生日祝賀会で、一年を振り返って3州に跨る63の移住地を訪問したと紹介し、「畏敬の念を新にするとともに、日系社会の将来は素晴らしいものになると確信している」と語った。11月には、聖南西13の移住地を巡り、在聖総領事として初めて同地域最古と言われるラポウザ文協を訪問。村総出で街道から村に続く道を整備し、温かく歓迎された。毎週末開かれる式典やイベントごとでも、見ない日はないほど。「アミーゴ」と慕い、中前総領事と歓談を楽しんでいた招待客が大勢いたのは、日系社会を思う気持ちが通じているからかも。
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祝賀会に出席していた、通訳の相良クリスチーナ泉さんは、日本で参議院議員を務める元プロレスラーのアントニオ猪木の姪にあたるという。なんでも祖母は厳しい人で、孫たちがポ語で会話をしていると、猪木さながらのビンタが飛んだとか。「日本人なんだから、日本語で話しなさい」と言われて育ったそうで、「でもそのお陰で今がある」と懐かしむ。皇室への敬意を忘れず、筋金入りの日本語を大切にする家庭で育ったからこそ、優秀な通訳として活躍しているのかもしれない。