ホーム | 連載 | 2016年 | JICA=日系社会ボランティア30周年=リレーエッセイでたどる絆 | JICA=日系社会ボランティア30周年=リレーエッセイでたどる絆=第9回=元プロ野球選手の初派遣

JICA=日系社会ボランティア30周年=リレーエッセイでたどる絆=第9回=元プロ野球選手の初派遣

10月9日、ブラジル国内の大会(アダルトカテゴリー)にて、史上初の3年連続チャンピオンを達成。私も微力ながら勝利に貢献しました

10月9日、ブラジル国内の大会(アダルトカテゴリー)にて、史上初の3年連続チャンピオンを達成。私も微力ながら勝利に貢献しました

「プロ野球選手」経験のあるボランティア派遣は、JICAの長い歴史の中で、意外にも、私が第1号だと知り驚きました。現在、サンパウロ州マリリア市の「マリリア日系文化体育協会」へ随伴者の妻と共に派遣して頂き活動をしています。
 2011年3月11日、東日本を未曽有の大災害が襲いました。私の出身地、岩手県釜石市も大津波に襲われ、甚大な被害を受けました。震災直後は何も出来ず無力に思いました。
 数年経過したある日、報道で、釜石の子供達が笑顔で前向きに野球をする姿を目にし、とても感動しました。「大好きな野球で子供達を笑顔に出来れば」と考える頃、妻が「JICAボランティアに野球の要請があるよ」と示し、そこには、「世界に笑顔を広げる仕事」と書いてありました。子供達の笑顔は全世界共通の「宝物」日本だけではなく、世界に目を向けようと考えた事がブラジルに来た一番の理由です。
 任地マリリアでは、野球、ソフトボールで、全15カテゴリー、約200名の個性や才能と対峙しています。また、12名の監督、コーチにも技術や戦略、怪我をしないトレーニングや体のケア等のアドバイスも行っています。
 任地で求められる、専門性の高い「正しい」知識と経験を「分かり易く」アドバイスし、すべての子供達が持っている可能性を伸ばすお手伝いが出来れば幸せです。
 今年の8月、「2020年東京オリンピック」で野球、ソフトボールの公式種目復活が決定。「東京オリンピックに行きたい」という子供もおり、今後のボランティア活動がとても楽しみです。
 クラブでは、野球、ソフトボールの大会開催や毎年4月開催の「ジャパンフェスタ」(3日間で最大7万人が参加)等で、関係者や保護者等が協力し、パステル、焼きソバ等を販売、収益を利用し、クラブ運営を行っています。
 また、スポーツ振興として野球、ソフトボール参加促進プログラムも実施。無料送迎バスの運行、ユニフォームの提供や道具の貸出、試合時の昼食や遠征費用の無償提供や補助を行い、ブラジル国内で問題になっている、子供達の「ドラッグ、アルコールへの依存」「窃盗・恐喝」等の犯罪の抑止力としても機能しています。
 日系人だけでなく、全ての子供達に「夢と希望を持って欲しい」という、クラブの思いが込められている活動です。
 野球、ソフトボールを通じ、マリリアの子供達が笑顔で「夢や希望」を思い描き「東京オリンピック出場」が夢でなく現実になるよう微力ですが、自身のノウハウを伝達出来ればと考えています。


與浦幸二(ようら・こうじ)

【略歴】岩手県出身。46歳。元プロ野球選手。日系社会シニアボランティとしてサンパウロ州マリリア市のマリリア日系文化体育協会に2016年6月に派遣された。任期は2年間。