【ワシントン共同】米首都ワシントンのスミソニアン米国歴史博物館が、第2次大戦中に米国で「敵性外国人」として強制収容された日系人の歴史を継承する特別展の準備を進めている。強制収容につながった大統領令から75年となるのに合わせ、来年2月17日から一般公開予定。同博物館で日系人の歴史に関する単独展示は2004年以来で、トランプ次期大統領の下で拡大が懸念される排外主義を問い直す契機にもなりそうだ。
特別展は、18年2月までの1年間。同博物館の一角に、旧日本軍が真珠湾を攻撃した翌年の1942年2月19日にルーズベルト大統領が署名した「大統領令9066号」の原本や、収容された日系人が施設で強いられた生活を示す写真など100点余りを展示する。
米兵として出征した息子の無事を祈る日系1世の女性たちが縫った千人針や、米国への忠誠を証明するために入隊した人が着ていた米軍の制服など、二つの国家のはざまで戦時を生きた日系人の苦悩を象徴するような品々もある。
学芸員として特別展に参加している福岡県出身の実藤紀子さんが「日系人が体験した過酷な状況を伝えたい」との思いから、日系人団体などと意見交換を重ねながら準備してきた。
同博物館には米国内だけでなく世界各国から年間約450万人が訪れる。西部ユタ州で収容所生活を経験し、特別展に賛同しているメアリー・ムラカミさん(89)は「大統領の署名一つで私たちの権利が奪われた。米国人だけでなく世界中の人にそんな歴史を知ってほしい」と話している。