昨年12月25日、サンパウロ中心部、地下鉄ペドロ・セグンド駅構内で、近くで露天商を営むルイース・カルロス・ルアス氏が2人の男に暴行されて死亡したと、12月26~29日付ブラジル各紙・サイトが報じた。
事件は25日の夜、地下鉄を利用しようとしていた女装した男性が、同性愛嫌悪主義者の男2人に言いがかりをつけられて追い回された際に発生した。
女装の男性は地下鉄に乗らずに駅から逃げ去ったが、男2人は暴行を止めに入ったカルロス氏に標的を移して暴行。地下鉄構内で床に倒れたカルロス氏に殴る、蹴るの暴行を加える様子や、カルロス氏が動けなくなってからも戻ってきて頭部を何度も踏みつける光景は一部始終、防犯カメラがとらえていた。
クリスマスの夜に起こった悲惨な事件は全国ニュースで報道された。
防犯カメラの映像が決め手となり、2日後の12月27日にはリカルド・マルチンス・ド・ナシメント容疑者(21)がサンパウロ州内陸部のイトゥペヴァ市で、28日にはアリピオ・ロジェリオ・ドス・サントス容疑者(26)サンパウロ市東部イタケーラ地区で逮捕された。
容疑者2人は今後、裁判で暴行致死容疑と「いわれなき理由での殺人」、「全く防衛手段を与えずに殺害」の加重刑罰の是非も問われる。
アリピオ容疑者は、捜査にあたった地下鉄警察によってバーラ・フンダ駅に連行されたが、居合わせた人々の中には、罵るだけでは飽き足らず、彼に危害を加えようとする人まで現れた。
弁護人は、暴行は被害者が加害者から携帯電話を盗もうとしたために起こったとし、一人は加害者から瓶で殴られたと主張した。
警察は、アリピオ容疑者が「後悔している。(被害者との間に)誤解があった。バカな事をした。酔っていた」と語ったことを明かした。
アリピオ容疑者の元妻は、「彼はカッとなり、抑えが効かなくなる事が多かった。物にあたったり、大声で叫んだり、口汚く罵ったり。近所の人からも眉をひそめられていた」と語った。
地下鉄警察は、犯行現場に居合わせた14人の証人による「面通し」を行った。14人の中には最初に暴行された、女装の男性ホームレスもおり、全員がこの2人が犯人であることを認めた。
被害者の妹のマリア・デ・ファチマ・ルアス氏は28日朝、バーラ・フンダ駅で司法の裁きを求める声をあげ、地下鉄警察に連行されてきたリカルド・マルチンス容疑者に向かって「この殺人犯」と罵った。
「私はとても怒っている。どうしてこんな事が出来るのか想像も付かない。(亡くなった)兄は人を助けようとしただけなのに。犯人の2人に犯行時に何を思っていたのか聞いてみたい。犯人は自分の親兄弟の事、娘のことは考えなかったのでしょうか。自分が殺した相手にも家族がいる事に考えは及ばなかったのでしょうか。同じ人間のすることとは思えない」と語った。